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第八類 第二、第三、第四類の変態機構 Reduced Forms of 2nd., 3rd., and 4th Mechanisms.

本類は専らクランク揺腕又は滑り子クランク等の変態を集む。既に知られたる機構の一部分の形状を変ずることによりて特種の作業を為す機構を得る例あり。

140. クランクとコロ Crank and Roller.

図. クランクとコロ

4 は円柱状コロにしてその両端の軸頸 3, 3 は右端が二枝に分かるる連桿 23 の両端軸受部にて握らる。クランク 12 の回転はコロを転がしつつ左右往復運動せしむ。

141. クランク揺腕と楕円クランク(クランク・ロッカーとエリプティク・クランク)(其一)Crank Rocker and Elliptic Crank.

図. クランク揺腕と楕円クランク1

クランク 34 の回転によりて溝滑り子ピン 5 は類似楕円を描く。クランク 34 が等速に回転するとき 7 は上下の位置において遅く中央において速き回転を為す。

142. 同(其二)

図. クランク揺腕と楕円クランク2

本機構は上者の溝付クランクの代わりに短きリンク 56 を用いたり。

作用は上者とやや同一なり。

143. 変態スライダークランク(其一)

図. 変態スライダークランク1

駒 4 はガイド・ロッド 3 を滑り且 5 の内に回転す。クランク 12 の回転によりて 5 は往復運動を為すことピストン・クランクの作用と全く同一なり。(60) にもこの種の機構あり。

144. 同(其二)

図. 変態スライダークランク2

ピン 4 はやや水平に動く様にリンク(図に示さず)にて吊さる。之によりて滑り子 5 を円弧のガイド 6 の内を上下に動かし得。エキセン 2 の一回転はロッド 7 を左右に一往復せしむるが滑り子 5 の位置によりてその運動の相が種々異なる。蒸気機関における蒸気分配装置に応用せらる。

145. 同(其三)(一端にて休息する往復運動)

図. 変態スライダークランク3

揺腕 4 の中央部の曲がれる溝の中心線はクランク・ピン 2 の書く円弧と一致す。左右に往復運動するテーブル 7 をリンク 56 にて揺腕と連結す。クランク 12 の一回転はテーブル 7 を一往復せしむ。ただしクランク・ピン 2 が弧状の溝を動く間は 7 は左端において静止す。

146. 同(其四)(両端に滑り子が休息する滑り子クランク)

図. 変態スライダークランク4

クランク 12 が回転するときは滑り子 6 はその行程の両端にて静止す。レンガ製造機械、特種のプレス等に応用せらる。

147. 変態交叉滑り子クランク機構(変態クロス・スライダー・クランク)Reduced Form of Cross-Slider Crank.(其一)

図. 変態交叉滑り子クランク機構1

甲図はロッド 5 が左端において休息する運動、乙図は交叉滑り子の場合に比しロッド 5 と直交すべき溝を弧状とせしものにしてロッド 5 が右端に来るときその速度遅くなる。

148. 同(其二)

図. 変態交叉滑り子クランク機構2

両滑りツガイ 4, 5 は斜に取付けられたるを以て食違い滑りクランク(スキュー・スライダー・クランク)Skew Slider Crank. の名あり。

149. 同(其三)

図. 変態交叉滑り子クランク機構3

クロス・ヘッド 4 の左右往復運動はクランク 12 を矢の方向へ回転するに死点の如き位置なし。即ちハズミ車の補助によらずクロス・ヘッド 4 の左右往復のみにてクランクを回転し得。

150. 同(其四)(下端において休息する上下動)

図. 変態交叉滑り子クランク機構4

上下運動するロッド 5 の中央にへ字形の溝ありて之に円板クランク 2 のクランク・ピン 3 が緩みなく運動す。2 の一回転はロッド 5 を上下に一往復運動せしむ。図示の如くロッドが下端に来るときはピン 3 のある回転の間動かず。

裁縫機械等に応用せらる。

151. ラプソン滑り子(ラプソン・スライド)“Rapson” Slide.

図. ラプソン滑り子

滑り子 3, 4 はピン 5 にて互いに廻る。テコ 12 を左右に振るときは滑り子 4 は左右に動く。

船舵の操縦器等に応用せらる。

152. 上者の変態 Reduced Form of Rapson’s Slide.

図. 上者の変態

ロッド 4 に取付けられたる鍔 3, 3 はテコ 2 の下端を挟む。水平ロッド 4 の左右動はアーム 15 を右左に振る。

ウィシングトン・ポンプ等に応用せらる。

153. 掛外し装置(アンフッキング・デバイス)Unhooking Device.

図. 掛外し装置

ロッド 7 の左端にはエキセンあれど図に示さず。7 の左右動は揺腕 12 を左右に振るがベル・クランク 45 を左廻するときはリンク 56 は 7 の右端を釣り揚げて 3 と 2 の組合を外づすより 12 の揺動止む。

154. 砕鉱機 Stone-crusher.

図. 砕鉱機

エキセン 4 の回転は揺腕 13 と左右に揺動し之によりて支片 7 が揺腕 56 を左右に揺動せしむ。エキセン 4 の回転力は 6 において強大なる力を生ずるにより 8 部に挟まれたる鉱石塊は 6 の左右動により砕かれて落つ。

155. 四手リンク

図. 四手リンク

ロッド 5 を動かすときは他の三個のロッド 6, 7, 8 亦同時に動く。

156. 無死点クランク No Dead Centre Crank.

図. 無死点クランク

28 はクランク 12 のクランク・ピン 2 の端より出でたる腕にしてその端 8 はバネ 10 の上端とリンク 89 にて連結せらる。踏板(トレードル)6 を踏みてクランク軸 1 を回転するに当たりクランク・ピンが上下の死点に来る時(左側二図参照)はバネ 10 の弾力はこの点を通過せしむる力となる。

157. 交叉リンクの天秤機関

図. 交叉リンクの天秤機関

クランク 12 が回転するときは連桿 23 にてリンク 34 を振る。因てリンク 56 も亦振りて連桿 67 はピストン・ロッド 8 の上下往復動を生ず。天秤機関にてはピストン・ロッド 8 が動者にしてクランク 12 が被動者なるによりその軸 1 にハズミ車を取付く。

158. 膝テコ(肘テコ)Knee-lever.

図. 膝テコ

角 124 は平角に近き鈍角とす。テコ 8 を押す力は端 4 に強大なる力となる。

圧搾機、穿孔機等に応用せらる。

159. 機械口壜 Rubber-stoppered Bottle.

図. 機械口壜

牛乳ビン又は酒ビンを簡単なる方法にて開閉する仕掛にして日常見る所多く設明を要せず。 曲がれる線金製テコ 1.2.3 はバネ形を為し之を少しく開きて基の端 1, 1 をビンの窪孔 0 に差込む。ゴム輪 6 を張る磁器栓 5 の上を線金 4 が貫通し 4 の両端は穴 2, 2 に入りて蝶番を為す。図の位置にては栓を閉づれども、点線の位置に置くときは開き得。(70), (71) と同様の機構なり。

160. ツガイ膨大の滑り子クランク

図. ツガイ膨大の滑り子クランク

(60) 及び (63) に示したる機構においてクランク・ピン 2 が膨大して本図の如く円板大と為り且クロス・ヘッド・ピン 3 も亦膨大して大なる円板 3 と化すときは本図の如き変態と為る。されば本機構は (60) と少しも異ならざる機械的運動を為し軸 1 の一回転はロッド 4 に一往復運動を与う。

161. 扇形クランク・滑り子

図. 扇形クランク・滑り子

軸 1 の回転によりてクランク 1, 2 を回転するときは滑り子 6 上下往復運動を与う。3 を中心として 4 が扇形の空間を廻る間は滑り子 6 は静止す。即ち滑り子は上昇の終において休息する上下往復運動を為す。圧搾機、穿孔機等に応用せらる。

162. エキセンにて揺テコを動かす装置

図. エキセンにて揺テコを動かす装置

エキセン 3 の一回転は揺テコ 4 を揺動せしむ。その揺動角は蝶ネジ 7 によりてリンク 2 に固着せらるるスロット 6 の位置による。爪車の爪の送り等に応用せらる。

163. クランクがある角だけ廻る間に一リンクが殆ど静止するリンク機構の案出

図. クランクがある角だけ廻る間に一リンクが殆ど静止するリンク機構の案出

まず四ツ棒クランク 1234 を作り、34 をクランクとす。リンク 23 を 5 点まで延長す。3 点の描く弧を 3, 32, 31、中心角を θ とす。3, 31, 32 に対し 5, 51, 52 を求め、円弧 5, 51, 52 の中心 6 を求む。任意の位置に点 7 を求め、かくして図示の如きリンク機構を得るときはクランク 34 の一回転に対してリンク 67 は揺動するもクランク・ピン 3 が角 θ を回転する間殆ど静止す。(注意)円弧 3, 32, 31 の間に数個の点を取れば之に対する 5, 51 等の諸点を近似に通過する円弧の中心 6 を求むれば一層正確なり。

164. クランクがある角だけ廻る間に揺テコが殆ど静止する機構の案出

図. クランクがある角だけ廻る間に揺テコが殆ど静止する機構の案出

クランク 12 の回転角を 2122 とし弧 2222 の中間に点 21 を取りて △234 を描く。次に直線 33132 を適当方向に描き △234 に等しく △213141, △223242 を描く。3 をスロット 8 のピンとし、中心線を 332 とする溝付スロット 67 を作る。三点 4, 41, 42 を通過する円弧の中心 5 を求め、四ツ棒クランクに 45 を作るときはクランク 12 の回転中ピンが弧 22122 を通過する間溝付テコ 7 は殆んど静止す((163) の注意を見よ)。