この問題の入力デッキはテストパッケージのleifer1.inp、leifer2.inpです。 これは2003年にJ. Leiferによって最初に作られたものです。 構造物は薄い正方形のシートで辺の長さは229mm、厚さは0.0762mmです。 シートは片側が固定され、固定された側と平行に反対側を1mmで動かされます。 ヤング率とポアソン比はそれぞれ3790MPa、0.38です。 実験事実からこのせん断変形によってシートにしわができることがわかっています。
ここではこの実験をシミュレートするには2つのアプローチ方法について説明します。 どちらの場合でもシートは2次のシェル要素を使用してシミュレートされます。 ひとつ目のシミュレーション(leifer1)では物性を線形弾性の等方性物性として考え、しわをシートを自然な座屈過程であると捕らえます。 この座屈を増進するために 、シート垂直方向(今回の例ではZ方向)の座標はランダムな方法でわずかに不安定化されています(確認するには入力デッキ内の座標を見てください)。 さらにこのシミュレーションは非常に小さな時間刻みで、非定常に行われます。図43に変形したシートの最大主応力を示します(x=0の辺が固定され、x=229の辺がY軸負方向に1mm動かされています)。 すぐにしわに気がつくことでしょう。 最小主応力を見ると実質的にシートには全く圧縮応力が働いていないことがわかります。座屈によってそれらは取り除かれているのです。 この種のシミュレーションの欠点は非常に長い計算時間(1ステップ時間に336回のループが必要です!)がかかるということです。
圧縮応力の欠如は正しい応力分布を得る2番目の方法を教えてくれます。物性を等方性としてシミュレーションする代わりに、引っ張りのみの物性モデルを使用するのです(leifer2)。この方法には収束がずっと早くなる(計算時間が短くて済む)という利点があります。図44と45で両方のシミュレーションのせん断応力を比較できます。両者はとても良く似ています(等方性のシミュレーションのせん断応力分布とはしわがないことが大きく違います)。同じことは他の応力成分に関しても言えます。ただし引っ張りのみ物性の使用では面外変形は生じません。しわは最小主ひずみによってのみ間接的に観察されるだけです(図46)。大きな負の値はしわがあることを示しています。