爪の作用によりて連続的又は断続的に運動を伝うるかあるいは逆転防止作用を為す機構之に類する機構を集む。爪の往復運動によりて毎回歯を一枚ないし数枚ずつ同一方向に廻すを「送る Feed」と言う。爪車を送る爪をクリックと言い、逆転防止に用いたる爪をボールと言うが至当なれども世間この区別を混同する者多し。
止爪 1 を外づせば爪車 5 を左右何れにも回転し得。1 を図の如く 5 の歯間に掛けるときは 5 は回転すること能わず。5 を適度に廻して後その位置を固定するに 1 を用う。
腕 6 の揺動は爪(クリック)1 にて爪車 5 を送る。又爪 1 のピン 2 が固定するとせばこの爪は爪車 5 が矢の方向に進むには何等の作用を為さざれども逆転を防ぐ。この場合 1 を逆転防止爪(ポール)Pawl と言う。
戻り止 1 は車 5 の切欠 7 に掛け外づす。腕 6 は軸 3 に固定し車 5 は軸 3 上に遊動す。1 を 5 の切欠 7 に掛けるときは爪車 5 と軸 3 とは一体を為して同時に回転す。1 を外づすときは 5 は自由に軸上に回転す。
爪車 5 は軸上に遊動す。腕 1 は軸に固定しその先端のピン 6 上に一体を為せる 2, 3 が遊動す。13 は軸に取付く鍔。バネ 4 は鍔を締めその先端は腕 2 より出でたるピン 7, 8 にて挟まる。図示の位置においては 5 は左右何れへも自由に回転し得れどもバネ 4 を右へ廻して 2 と一体を為す爪 3 を点線図の如く歯と組ますときは腕 1 の左右振動は 5 を送る。ただし図には示さざれども別に爪ありて 5 の逆転を防ぐ。これ (381) 及び (383) の 3 の如し。又 (371) の設明を見よ。
腕 2 の輪部を爪車 5 の軸 1 が貫通す。爪 3 の背をバネ 6 が押す。リンク 8 の上下振動は爪車 5 を送る。逆転防止爪ありて 5 の逆転を防ぐ。
7 は押爪、8 は引爪。テコ 4 を左あるいは右に動かす毎に 7, 8 の何れかが作用して爪車を右廻に送る。又逆転防止爪を用う。
7, 8 は押爪。テコ 4 を右あるいは左に振る毎にその何れかが作用して爪車 5 を送る。又逆転防止爪を用う。
これ上者の変態なり。ベル・クランク 214 が右あるいは左に振る毎に押爪 7, 8 の何れかが作用して爪車 5 を送る。又逆転防止爪を用う。
7, 8 は何れも引爪。ベル・クランク 214 が左右振動する毎に 7, 8 の何れかが作用して爪車 5 を矢の方向に送る。又逆転防止爪を用う。
6 は別図に示す如く周囲に片刃を有する面爪車 Face-ratchet Wheel。3, 3 はクリック。リンク 5 の左右往復運動は車 6 を矢の方向に送る。
3 は外輪に数多のピン 6 を有するピン車。テコ 2 を左右に振る毎にプッシング・ロッド Pushing Rod 4, 5 の何れかがピン車をピン一個ずつ送る。
爪 2 が矢の方向に一回転する毎に爪車 5 の歯を一枚ずつ送る。爪 3 は 5 の逆転防止用なり。
爪車 3 は軸 1 上に運動す。軸 1 に固定する腕 2 に取付くるバネ柄の爪 4 がバネ 5 と爪車 3 の間を通過する毎に爪 4 は車 3 の歯に組みて之を送る。図において腕 2 の一回転は歯を一枚ずつ送る。
構造全く上者と同一にして爪 5 付腕 4 の矢の方向に一回転する毎に爪車 2 を送る。爪 3 は 2 の逆転を防ぐ。4 を矢の方向と反対に回転するときは爪 5 は跳ねて歯先を通過するのみにて 2 を送らず。バネ 8 は常時 5 を押すにより爪の跳ねを容易ならしむ。
テコ 2 が一回転する毎に其端より突起するピン 3 が歯車 4 の歯を一枚ずつ送る。小車 4 は星形を為すが故に星形車の名あり。穿孔工具の送り仕掛又は紡績機械の部分に応用せらる。
これ上者の変態なり。テコ 4 端の爪 5 はピン 6 にて支えられバネ 8 がその背を押す。依て 4 の振動は矢の方向に 2 を送る。爪 3 は逆転防止用なり。
図において爪 7 が歯と全く組むとき爪 8 が刻みの三分の一進み 9 は三分の二進む。依て直径同一にして刻み三分の一の爪車に一つの爪が組むと同様なる細かき送りを掛け得。歯の細きは強さ小なり。依て強力に抗し且歯の強気を望む場合に送りを掛けるとき二、三個の爪を用いる。この仕掛は逆転防止用にも応用せらる。
軸 13 上を遊動するベル・クランク 2 の上端 4 に蝶番せらるる爪 3 はテコ 1 とリンク 9 にて連結す。2 の右枝に突出する二本棒 7, 8 はテコ 1 を挟む。1 を左廻するときはリンク 9 はまず爪 3 を歯より外づして後 3, 2, 1 が共に左廻す。次に 1 を右廻するときはまず爪 3 が歯間に噛み入りて後爪車 5 を廻す。本機は爪車特有のカチカチの音響を発せずして静なり。
爪車 2 は軸に固定す。5 はその上下片が 2 を挟み且軸 1 上に遊動す。爪 3 の背をバネ 8 が押す。取手 5 を左右に振動するときは 3 が 2 を送るにより軸 1 は回転せらる。製缶用手動錐又はスパナー等に応用せらる。
構造 (388) と同一にして爪 3, 4, 5, 6 が (386) に説きしと同理にて取付く。8 はバネ。爪車 2 は歯十二枚なれども歯四十八枚のものと同様の送りを掛け得。(388) のものに比して細かき送りを掛け得らるるにより柄の運動に無駄働き少なし。
(388)、(389) と同一の目的に使用せらる。棒状の爪 8 は軸 1 に固定する円板(ディスク)2 内に出入し圧縮バネ 5 が之を押す。6 の右廻には 2 も共に回転するが 1 の回転に抵抗あれば 6 の左廻には 2 は廻らず。
ベルクランク 1, 2 は軸 3 上に遊動す。丁字形爪 4 を図示の如く掛けるときはリンク 7 の上下往復運動は歯車 5 を矢の方向に送る。之に反してクリック 4 を点線図の如く移さば歯車 5 は矢と反対の方向に送らる。工作機械の送りの仕掛等に応用せらる。
圧縮バネ 10 は爪 7 を押す。腕 1 は軸 13 上に遊動す。1 の振動は爪車 5 を矢の方向に送る。爪 4 を押して 5 の歯と噛ましむれば 5 を矢と反対の方向に送る。6 の中部切欠に 7 を噛ますときは 3, 4 は外づれて 1 の振動は 5 を廻す能わず。
8 は左右に振動するテコ。軸 1 上に遊動する丁字状アーム 2 はリンク 5 によりて左右に移動す。5 を左方に曳くときは歯車の歯は爪 3 の右枝と組みて矢の方向に送らる。之に反して 5 を右方に移すときは 3 の左枝と歯車と組みて歯車を矢と反方向に廻す。図示の位置にては歯車は廻らず。又 2 が左右に寄る度によりて一回の送り歯数を異にす。
テコ 4 は縦軸を中心として左右に振動す。爪 3 は爪冠車 2 を送る。粗品なれども廉価なるにより玩具等に用いらる。
重き且大なる内向歯車 4 は鍔付軸 1 上に遊動す。三個の爪 3 と組むボス 2 は軸 1 に固定し共に回転す。軸 1 を急速に左右に振動するときは車 4 は同一方向(図においては左廻)回転す。
このとき軸 1 を握るも車 4 は回転す。独楽(コマ)等に応用せらる。
上下内側に反対の向きの鋸歯 4, 5 ある枠 2 を釣桿 3 が吊る。枠の左右は案内(ガイド) 7 にて水平運動を為す様に案内付けらる。3 によりて 2 を下ぐるときは 6, 4 が組みて枠を右方に送るが之に反して 2 を引き上ぐるときは 6, 5 が組みて枠を左方へ送る。中間に置かば 6 は枠を送らず。
1 は一つ置きに深く刻める歯を有する歯車、2 は軸上に遊動するピン車。コロ 5 はバネ 6 によりてピン車の二個のピンの間に割り込む。テコ 8 を左右に振るときは爪 9 は 1 の浅き歯 11 を送る。次に左方点線の位置より右方に戻すと 9 の端が歯 12 の深き刻みに落つるにより爪 10 はピン 4 と組むにより 8 を左方へ動かすときは 1, 2 は共に送らる。斯くしてテコ 8 の二振動毎に車 2 がピン一本ずつ送らる。1 の歯の形によりて数振毎に一回の送りを掛け得。コロ 5 はピン 4, 4 のピッチの半分以上もしくは一倍半以下の送りにおいてはコロ 5 が 4, 4 間に割り込み一ピッチ送りと同一の結果を生ぜしむ。
下部のコロ (ロ’) はバネ仕掛にてピン車二本のピンの間に割り込むによりピン車は正しく一ピッチだけ送らる。ボール (ト) を有するテコ (チ) を一振動するときは右側のピン車は一ピッチずつ送らる。又カム (へ) は (ロ) 及び (ト) と衝突なき平面にありて之が左隣の車のピン間に挟まるときは隣車を一ピッチ進ます。英国の理学者カーベンデッシュ Carvendish の発明にして軸の回転数を計る機械に応用せらる。下図は上者の変態にしてカム (へ) の代りに両車にまたがりて掛かるポールを用いて 9 より 0 に移る場合に上位の車を一ピッチ送る。
金物 2 にて吊さるる枠 1 は縦構 10, 10 を案内として上下す。3 は楔。4 は圧縮バネ。吊り綱の切れたるときはバネ 4 は左右のベルクランク 5, 6 を押し下げ爪 7, 7 をラック 9 の歯と組ましむるにより 1 の落下を防ぐ。
綱車 4 は軸 1 上に遊動す。爪 2 は軸 1 に固定せらる。綱車 4 と 6 にて蝶番せらるる腕 5 は 4 の側面より突起する二個のピンの間を動く。2, 3 が噛むときは軸 1 は綱車 4 を廻すが 5 が梁 8 と当たるや 2, 3 の噛合は外づれて綱 9 に吊せる荷物は自由落下す。
歯車 2 及び爪車 3 は軸 1 上に遊動し両者は圧縮バネ 10 にて連結す。爪車 4 とドラム(円筒状にして縄 8 を巻く)5 は軸 11 に固定す。6 は爪、7 はバネ。5 に巻かれたる縄端の錘 9 の落下によりて歯車 2 は小歯車 1 を回転す。軸 11 を右に巻く瞬間にはバネ 10 の弾力が 2 を回転せしむ。されば運転中軸 11 を右廻して縄 8 を 5 に巻く間も小歯車 1 は回転さる。
2 は軸 1 に固定する爪車。3 は爪。動滑車 6 に掛かる錘 9 は定滑車 7 を回転しつつ下り之と反対に錘 8 は上る。又運動中に軸 1 を巻きて錘 9 を巻き上げて 8 を下ぐるときにも車 7 の回転は同方向に行われて休む事なし。故に軸 1 を間欠的に巻きて車 7 を連続的に回転せしめ得。
爪車 12, 13 は軸 1 に固定す。遊動綱車 2, 3 にはそれぞれ爪 4, 5 が取付く。10 は 2 に、11 は 3 に掛けられたる綱。踏板 15 を揺動するときは軸 1 は矢の方向に連続回転す。6 は勢車にして回転を滑かにす。
相等しき爪車 2, 2’ は軸 1 に固定し歯車 3, 3’ は軸 1 上に遊動す。軸 1 には勢車ありて惰性にて回転すと定む。ロッド 5 を左に曳くときは爪 7 が 2 を押してラック 4 が歯車 3 を廻し軸 1 を右廻す。ただしこの際歯車 3’ は遊動す。次にロッド 5 を右に曳くときはラック 4’、歯車 3’、爪車 2’ によりて軸 1 は前と同一方向に回転す。即ちラックの左右往復運動は軸 1 を連続回転せしむ。
テコ 6 を振動するときはロッド 1 は上下動し之に付属せる上部の爪 3 は爪ラック 2 を上方に送る。
下部の爪(ボール)3 はラック 2 の逆行を防ぐ。
エキセン 5 を一回転する毎にそのストラップ(外輪)に付属する爪 4 はラックを送る。爪 3 は 1 の逆行を防ぐ。本器は強き力に抵抗して物を上げ又は動かす場合等に利用せらる。
取手 1 を引張バネ 5 に逆うて押せば爪 3 は爪車 2 を送る。4 は止爪にしてバネ 6 が之を押す。
取手 9 を右廻りに押せば軸を中心とするカム 10, 10 が爪 3, 4 より突出するピンを押上げて押爪 3、止爪 4 の掛かりを外づす。この時、斯くすれば爪車 2 は左右自由に廻る。
爪車 5 の面に穿てる溝カム 6 内を動くコロ 2(点線で示す)はロッド 1 の左端、スロット 7 を貫くピンを軸とす。ロッド 1 の一定の往復運動は A 部が爪 4 と組むとき最大の送りを生じ B 部が組むとき最小の送りを生ず。
溝付揺テコ 2 はスロット 3、ピン 4 の回転によりて上下に揺動し之によりて爪 5 は爪車 6 に送りを掛ける。爪送りの度はネジ 7 を廻して加減す。
エキセン 3 の両死点においては爪 2 の動き遅き故に爪の掛り始めと終りにおいて衝撃なく音の発生少し。
2 は (409.3) に示す爪で左右に揺動するテコ 3 にピン取付せらる。爪車に穿てるネジ穴にドッグ(回し金)Dog(軸方向に偏心に孔ある円柱)4 及び 5 を取付く。
爪 2 の左が作用して爪車を左廻しに送り、ドッグ 4 が爪 2 より垂下する舌 7 に当たれば爪 2 は右廻りして右爪に掛かる。従て爪車は前と逆に右廻りに送らる。送りの数はドッグ 4, 5 の位置に依て定めらる。
斯くして送りが自動的に左あるいは右に掛かる。
上図及び中図においては錘 1 を右に傾ければ右爪が作用し左に傾ければ左爪が作用す。下図においてはテコに固定するピン 2 に刻みを附し之に圧縮バネ 1 にて押さるる爪 3 が組む。ピン 2 に対して 1 を右に傾ければ右爪が作用し左に傾ければ左爪が作用す。
ロッド 1 の往復運動は爪車 5 を右廻りに送るが 1 の押しに対してまず爪 3 が外づれて後リンク 2 と共に戻るにより音を発せず。(387) を見よ。
角歯を有する爪車 1 に爪 3 及び止爪 4 が組む。4 は重力によりて作用し 3 は引張バネ 5 によりて作用す。
円板 8 は爪車 2 と一体をなす軸 1 上に空転し歯車其他の仕掛によりて左回転す。之より等分に突出する数多のピンの一つ 5 は爪 3 を押して爪車 2 を送る。而して爪 3 より突出するピン 6 が固定カム 7 に触るるに至れば爪 3 の下端が 5 より外づれて引張バネ(図示せず)あるいは重力作用にて 3, 4 が右廻しその下端がピン 51 に突き当る。8 の左回転は爪 3 にて 2 を送る。而して51 が 5 の位置に達するや再び前述の作用を繰返す。
自転車の軸 1 上に空転する鎖車 4 の輪周内面の窪める部分 3 は爪 2 を容る。軸 1 に固定する車 5 の輪周には多くの角歯を刻む。5 は爪 2 によりて 4 を回転するが 4 の矢示の回転は 5 の静止に関係なし。
(395), (585) と同作用なり。
爪車に相当する運動を為す歯車 5 の軸 4 上に空転する二又テコ 3 は芋虫 2 とその左端が推力に対する摩擦少なき球軸受 1 を挟む。芋虫の左辺側は軸に直角に、右側は斜なる三角ネジなり。3 が矢の向きに右に振るときは 2 は軽く回転して車 5 を廻さぬが矢の向きに反対に左に振るときは 2 は 5 の歯に対し滑らずに 2, 5 一体にて動く。故に 3 の往復運動は歯車 5 を左廻りに送る。
図の如き線金引延機械において元軸 1 の回転に伴いてドラム 2 が廻り線金 4 を駒 5 にて細めつつ之を巻きとるがこの際 4 が切れれば爪 3 が落ちて 1 の回転を止める。