本類は機械又は器具の部分にバネを利用せしものを集む。バネには提灯バネの如く線金を螺旋状に巻きてその軸方向に押す力、引張る力、あるいは捩る力 (544) を加うるもの等種々あり。板を重ねたる車の重ネ板バネの如き、巻バネ (540), (543) の如き、帯板を渦巻き形に巻きて之を軸の方向に引出し、一見 (544) の 1 の如き形とし軸の方向より押力を受くる蔓巻バネ等種々あり。
足踏 6 によりてクランク 2 に回転を伝うる場合にピン 2 が直上、直下の両死点にありて足踏の力が伝え難きとき巻バネ 4 の力はこの点の通過に助力す。板バネを利用するも可なり。
(右図)竹竿 3 はたわめられて 2 を押す。
(左図)板バネ 3 は糸 5 によりて 2 を 1 に押付ける。古来研磨用等に応用せらる。
左図の如き重ネ板バネを四分一円バネと称し。弓状を重ねられたるもの (543) を半円バネと称し、之が上下に重ねられたる車のバネの如きを全円バネと称す。
竹の如き弾性に富める棒 3 はたわめられその左端が固定せられ右端に結ばれたる綱 5 は材料 2 の軸 1 を数回して踏板 4 に連結す。バネ 3 の弾力は踏板を上方に引き上げんとす。依て踏板を踏む毎に丸く削るべき材料 2 は矢の方面に廻わり脚を上ぐれば逆に廻る。4, 5 両端を弓弦とし弓を動かして軸 1 を廻す仕掛あり。
板バネ 1 を車のビーム 5 に取付けたる図。3 は固定点。9 は移動点。シヤックル Shaekle 4 はバネたわみて 2, 3 両点の距離変化するためのリンク。3 を固定し 2 にシヤックルを用いるもあり。
板巻バネ 2 の一端は左の固定軸に取付き他端は鎖(チェーン)3 に取付き 3 が 2 に巻付く。2 は巻くに従いて回転モーメント増加す。1 は上部より下部に至るに従い次第に半径を増す竹子形ネジ車にしてフュージーと呼ぶ。本機は終始一様の回転モーメントにてバネを巻く。時計の巻バネ仕掛等に応用せらる。
両軸 1, 2 を連結して回転を伝えるに巻バネ 3 を以てす。両軸交角は平角より直角に種々変化し得。捩りの力を一層強くするには左巻バネの上に右巻バネを覆うが如き二重巻バネを用う。さすれば中のバネが膨れてて外のバネが縮まる向きに回転すると両者が捩れに対し力強くなる。
ゴム筒 1 内に 9 に示すが如く数本の鋼鉄線金を巻き合せたるバネあり。その一端に錐 2 を取付け他端に綱車 3 を取付く。綱車 3 の回転によりて錐 2 を回転す。錐 2 は何れの位置にも移動し得て且回転し得。8 の部分は軸と回りツガイを為すによりこの部を握りて差支えなし。医療機械等に応用せらる。
右軸において張力バネ 3, 4 は等分に張られ戸扉 2 は図示の位置に釣合を保つ。左図において圧縮バネ 3 はコロ 4 の翼形カム 5, 5 の凹部に押付けて図示の位置に釣合を保つ。戸扉 2 を押して開き得るも放さばバネの弾力は再び 2 を図示の位置に戻して戸扉は自動的に閉づ。
本機は取手 4 を以てスイッチを開放せんとするとき 4 を手元へ引くに当りある程度までスイッチ板 2 は止まりてバネ 4 が伸びるが提灯バネ 4 は急に 2 を 1 より抜出して開く。斯くて火花の出を少なからしむ。
筒内の圧縮バネ 1 は丸棒 2 を押す。3 は図に示す位置か又は点線の位置に移りて安定し得。即ち 3 の位置より点線の位置に移し得。
中図は当て板リンクを示す。バネ 2 を押し開くこと点線に示すが如くして鎖又は環を掛け外す。
右図は当て板鉤を示す。当て板 3 は上端にて蝶番せられバネ 2 が内側より押す。2 の力に逆らって 3 を押し開き縄端又は環を掛け 3 を放さば閉づ。図の如き当て板鉤はバネ 2 が外に表われて不体裁なるにより左図の如く提灯バネを (549) と同様体内に収めたるものが新型なり。
4 は張力バネ。昇降機の室(ケース)Case 9 は綱 7 に吊られて上下するものなれどももしも綱が切断せんか其際バネ 4 は 3 を下方に曳くにより左右の爪 6, 6 は開きて木柱 1, 1 に食い入る。之がためケースは安全に支えられて落下せず。
割輪バネ Split ring spring。図はコンパスの脚を閉づる作用に応用せるもの。
バネ座金 Spring washer。之を座金としてナットを締むればネジ戻り無し。工作費の廉なるために突き合に切りたるものも用いらる。
複式皿形バネ Compound dished disc springs。強大なる衝撃を緩和するに用いらる。
帯バネ Ribbon spring for torsion。捩りに対する反力を応用せしもの。
縦軸 5 の頭部と滑り子 8 の間に強き圧縮バネ 6 あり。8 はキーと溝の仕掛にて 5 と同時に回転するが上下に動くのは自由なり。4 は上部において 5 の頭部と連結す。5 を回転するときは回転速度の遅き間は左右球 3, 3 は閉づれども回転速度がある限度を超過すれば 3, 3 の遠心力は圧縮バネ 6 の抗力及び 6, 8 等の重量に打勝ちて開くにより 8 は上がる。ただし回転速度遅くなれば 8 は旧位置に復す。
円板 2 を鋳出す板 3 はピン 4 を中心として振り得。依て 2 と軸 1 との偏心の度を種々に変じ得。錘 7 を一端に有するアーム 8 の他端はリンク 9 によりて 3 と連絡す。バネ 10 は鋼帯 11 にて 7 を軸 1 に向いて引付く。回転が規定速度を超ゆるときは錘 7 の遠心力はバネ 10 の弾力に打勝ちて軸 1 より更に遠ざかるによって 2 の偏心の度を小にす。高速汽機等の調速機に利用せられたり。
テコ 3 と蝶番せらるるボール 6 の左部ペッカー 9 は弁垂 1 を押して弁を開き得。圧縮バネ 10 は 9 を押す。カム 3 の一回転毎にペッカー 9 は弁 1 を開く。然れども回転速度がある限度を超ゆるときはボール 6 の運動は関係的に後れてペッカーを上向に上ぐるにより弁垂 1 を押さず。この回転速度の限度はナット 11 によるバネ 10 の圧縮度によりて変化し得。
ロッド 3 の上下往復運動によりてペッカー 9 にはポンプ・ロッド 1 を押す。9 の下向運動においてその先端が 1 の上端を押す少し前に 6 はガイド 7 の坂を上りその際 9 が左に振れる。回転速度がある限度を超ゆるときはバネ 10 の押す力に打勝ちて左方に多く振れて結局 9 は 1 を衝かず。
ロッド 3 の左右往復運動はペッカー 9 によりて弁垂 1 を押して弁を開く。速度がある限度を超ゆるときはボール 6 は後れて 9 を上向に上ぐるにより弁垂を押さず。速度の限度は圧縮バネ 10 の圧縮の多少によりて加減せらる。
6 は枠に取付く棒又は突起。爪 4 は圧縮バネ 5 によりて常時は図示の如き位置に引付らる。4 は軸 1 及び之に固定する円板 2 の回転を何等防げざれども軸 1 が急速回転してある限度に達するや 4 の遠心力がバネ 5 に抗して 4 を開き、之がため 4 は 6 に当り軸 1 の回転が止る。巻揚機械のロープ切断せる場合ドラムの急回転を利用してを中止するが如き場合に応用せらる。
本器を油孔の口元にネジ込みて指頭で栓を押してその口より給油す。指を放さばバネは口を塞ぐにより他物が口から入らず。
錘 3, 4 は一体をなし太きピン 5 と周りツガイをなす。之にエキセン 2 も一体をなす。その全重心は 5 と 3 の間にあり。車が矢の向きに回転すれば錘 3, 4, 5 の重心に作用する遠心力と引張バネ 6 がある回転速度にて平衡してエキセン 2 の位置を保持するが負荷減ずると車の瞬時回転速度が増し之が為に錘の関係位置は後れてバネ 6 の張りに抗して 3 が遠心力増加の為の作用以上に飛ぶ傾向を生じその為ガバナー作用を速める。負荷急増して回転速度減ずる場合にも同様バネ 6 が 3 を引付ける速さを増す。
巻バネ 3 は其の内径が丸軸 1 よりもわずか小なるにより之に軸 1 を差込むと之を掴む。3 の左端は 1 上に遊動するテコ 4 に取付く。4 を矢の向きに押せば 1 は廻るが逆に上ぐれば 3 は滑りて 1 は廻らず。故にテコ 4 の揺動は軸 1 を矢の向きに送る。
軸 1 の矢の方向の回転は 2 より突起するピン 3 にて軸 1 に遊動する円板 6 を廻しそのカム 5 がテコ 8 を左に寄す。この時、械械は停止す。引張バネ 7 は急に 6 を矢の方向に廻し 5 を外づすにより引張バネ 9 は急に 8 を右に寄す。之により機械は始動す。
ロッド 1 が左方に進むときカラー 2 は 3 を左方に動かして爪 6 がその右に移る。然して 1 が右方に動くときはまず爪付テコ 5 の爪 6 は 3 を支え、それ以後バネ 4 は圧縮さるるが爪 7 が 5 の左端に当るや爪 6 が外づれ、3 は急に右方へ動く。
(左図)圧縮バネ 3, 4 に抗して 1, 2 を引出し得るが放てば元位置に戻る。
(右図) 3, 4 は圧縮バネ。棒 1 を引き出し又は押下げ得るが放てば図示の位置に落付く。
1 は扉の軸、2 は板巻バネ。一定軸線を有する軸 1 は左右何れも 90° 近く回転し得るが放てば図示の位置に帰る。
(左図)2 は扉 1 の固定軸、3 は突起片にして之をテコ 4, 5 が挟む。9 は固定片、6 は固定軸、8 は圧縮バネ。
(右図)3 は扉 1 の突起片にして之をバネ 4, 5 が挟む。6, 9 は固定棒。両図とも手にて 1 を左右に寄せ得るも放せば 1 は図示の位置を占む。
(左図)突起片 3 は扉 1 と一体を為す。2 はその軸にして引張バネ 7 はテコ 4, 5 を引寄せてその下端が固定片 6 を挟む。扉 1 は左右何れにも振り得るが放てば図示の位置に復す。
(右図)7, 8 は引張バネ。5 はその端が紙裏に向いて曲がり之がテコ 4 に当る。1 は手にて左右何れにも振り得るが放せば図示の位置に復す。
(左図)7 は扉 1 の面の突起片、3 は固定片、4 は引張バネ。扉 1 は左右に揺動し得るも放てば図示の位置に落付く。
(右図)扉 1 は左右に振り得るが放てば圧縮バネ 5 が図示の位置に落付ける。
両図において扉 1 は手にて揺動し得るが放てば引張バネ 7 が 1 を図示の位置に落ち付ける。
(左図)扉 1 を左右に揺動し得るが放てば引張バネ 8 は 1 を図示の位置に落ち付く。1, 4, 5 は一体なり。
(右図)扉 1 を右に引けばテコ 4 は上がり引張バネ 8 は更に延びる。又 1 を左に押せばピン 3 は棒 5 を押し下げ之によりバネ 8 は更に延びる。
何れの場合にても手を放せば 1 は図示の位置に落ち付く。図において 5, 10 は一体をなし 9 は固定ピンにして 5 の下端の溝を貫く。