機械の運動部分における摩擦はなるべく少なからしめて之に起因する消耗仕事を軽減せざるべからず。然れども摩擦も本類に集むるものものの如く有効に利用せらるる場合あり。自動車の車輪は道路と摩擦少なければ滑りて進まざる場合あり。汽車、電車等の車輪と レールに摩擦を必要とすること上者と同一なり。本類に属すベきものにして便宜上他類に編入せしもの少なからず。(327), (642), (646), (647), (648) 等その例なり。
クランプの脚 4 を台の穴 6 に差込み他の脚 1 を木片 6 に当ててネジ 5 を締むるときは木片 6 を確と押え得。木工に用いられ“早押” Hold Fast の別名あり。
ネジ 5 を締むるときはカム 1 は直立するロッド(棒)1 を確と押える。ネジ 5 を緩むるときはロッド 6 は自由に上下し得。
直立する棒 1 を矢の方向に揚ぐるには支障なけれども之を放つときは輪爪 3 は捩れて 1 を支う。3 を手にて支持するときは 1 を自由に上下動し得。往時ランプ釣等に応用せられたり。
並行なる縦の隙間 5, 5 に弧状に歯を刻める掴み 1, 1 を挟む。(甲)は環 2 か歯 4, 4 の間に入り縄 3 にて(乙)は握り接手 3 ありて何れも縄にて荷物を吊す。
乙は隙間の大きさやや一定なることを要するが甲は幅を広狭自在ならしめ得。この掴みを岩又は樹間に仕掛けて物を吊る。
柄 2 を右廻しするときは歯ある顎 1, 2 は丸棒又はガス管等を確と握りて廻す。左廻しするときは滑べりて廻すこと能わず。4 のピンの代わりに 5, 6 に入れ代えるときは大小種々の管に用いらる。
爪 3 を図の如く掛けるときは左右の管端は接続す。3 を外の方へ弾きて右の管を少しく廻して切欠部 4 を 3 に向わして両管を取外づし得。
軸 1 に固定する縁付車の外輪 2 と爪 4 とは別図に示す如く組合う。6 が上がるときは 4 は 3 の先端と共に 2 の縁を握る。6 が下がるときは握らず。テコ 9 の振動によりて 2 を矢の向きに送る。
リンク 6 を上下動して軸 1 を矢の方向に送り得。足形 4 は軸の傍面 1 を圧する力大なり。送り作用において音響なきを以て音無し送の別名あり。
木工機械の送等に応用せらる。
両車 1, 2 は互いにその接触面を押付く。両者 3, 4 も亦同様互いに押付く。
両車は何れも運動を伝う。車のリムはゴム、皮等弾性に富むものを巻付くを普通とす。
両端が鍔 6, 6 にて支えられ且軸に遊動するリング 5 はリンク 7 にて挟まる(図には示さざれ共 7 の軸には大なるテコが取付く)摩擦傘車 2, 3 は摩擦傘車 4 と組むが図示の位置にては 2, 3 何れも 4 と隙間あり。4 を動者と定む。7 によりて軸を左に寄するときは 2, 4 が組みて両者は動力を伝う。之に反して右に寄するときは 3, 4 が組みて調車 1 は逆転す。摩擦を増加する目的にて小車は木板、ゴム、生皮又は革を重ね合わして造る。
両円錘車 1, 2 はその面に数多の三角形の溝と楔を切り出し互いに相噛む。斯くして両者は強き動力を伝う。
両車 1, 2 は適当の仕掛によりてその溝面を互いに圧しつつ動力を伝う。本機は始動の際多少滑りて強大なる衝撃を生ぜざるにより一時に強大なる力を伝うる場合等に適す。鉱山用荷揚機等に用いらる。(580) と同一原理による。
4, 5 は右角ネジ又 3, 6 は左角ネジにして何れも同一の刻みなり。両車はV字状溝と楔にて互いに組合って回転を伝う。回転に当り音響無きを以て無音車の別名あり。
鋳鉄製溝車 1 はゴム輪車 2 と組む。座金 4, 4 はゴム 3 を左右より圧すによりナットを締むるときは 3, 1 両者の摩擦を更に増し得。
円錐車 3 に円錐車 2 が接触す。その押す力は圧縮バネ 9 による。5 は調車にして動者なり。ハンドル 6 によりて 2 を左右に動かし之によりて 3 の軸 4 の回転速度を種々に変じ得。(579) の変態なり。
八個のボール(球)2 はバネ 3 にて押さる。内輪 1 を矢の方向に左廻するときは 2 は 4 の楔状の隙間に喰い込みて外輪なる歯車を廻す。1 が矢と反対に回転するときは滑りて歯車は回転せず。 自転車等に用いらる。
自動車に用いられたる車をコースター Coaster(惰力走車)と言う。
摩擦車 1 はキー 10 と溝の仕掛によりて軸 1 と組み圧縮バネ 9 によりて両輪 5, 6 の間に強く張る。軸 1 は軸 8 に対し近づき又遠ざかり得。依て一定速度にて回転する動者たる軸 1 の位置の移動によりて軸 7, 8 を種々の速度に回転せしむ。
2 は垂直軸 1 端の水平円板。コロ 4 は水平軸 3 とキー・溝の仕掛によりて組む。車 4 の弾性は 2 を押す。軸 1 が回転するときはコロ 4 はその位置の移動によりて緩急自在に且左廻右廻何れにも軸 3 を回転せしめ得。
ブラシ車 Brush Wheels の別名あり。
ベルクランクの垂直枝 8 に取付くリンク 9 を右方へ引かば摩擦車 2 は円板 3 を廻すにより縦軸 5 が廻る。リンク 9 を左方へ押さば軸 5 は吊り上げられて 2, 4 が接触し軸 5 は前と反対に回転す。リンク 9 を中央に支持するときは 2 の回転は 3, 4 何れにも伝わらざるにより軸 5 は静止す。
直立する軸を有するコロ 4 は垂直なる円板 2, 5 にて挟まれ且圧せらる。軸 1 の回転はコロ 4 を通じて軸 6 に伝わる。コロ 4 を上下すれば両軸 1, 6 の速比が変わる。
コロ 4 を支持する軸 7 を廻すことによりて軸 1, 2 の回転速比を種々に変化し得。圧縮バネ 6 によりて両車 3, 3 がコロ 4 を圧す。
両ディスク 1, 3 は二枚の平たき円錐状の円板 2, 2 にて挟まる。テコ 5 を左右に寄することによりて両軸 6, 7 の回転速比を種々に変化し得。セラースは工作機械における送り装置に之を用いた り。
V字溝車 7 は軸 1 に固定す。テコ 2 は軸 1 上を遊動す。4, 6 は何れも縁の横断面がV字形のカムにして動径次第に大なる曲線を為す。リンク 9 の左右振動は 2 を振動しその都度爪 4 は矢の方向に車 7 を送る。ただし 6 は車 7 の逆行を防ぐ。木工機械の送りに用いらる。
リンク 10 を上下して車輪 2 を矢の方向へ廻す。3, 4 はリムの左右にあるシュー Shoe、ハンドル 8 によりてリンク 9 の振を加減す。3, 4 よりリム 2 は多少の隙間あり。10 を上に曳くとき 56 はコジレて 3, 4 は両側より 2 を強く押す。
木工機械の送り又は大なる勢車を手廻しする場合等に応用せらる。(576) を見よ。
縁付車 3 は軸 1 と同軸線を為し且紙裏の方向に走る軸に固定す。リム 2 の内面を爪 3 が押す。腕 5 の両バネ 4 は 3 を押す。軸 1 が矢の方向に回転するときは 1, 2 は共に回転す。軸 1 が矢の方向に回転するときは爪 3 は滑りて回転は 2 に伝わらず。西暦 1815 年仏人ドーボ発明す。
べルクランク 8, 9 に取付けられたるリンク 10 を矢の方向に曳くときは軸 1 の回転は調車 5 に伝わらず。リンク 10 を緩むるときは圧縮バネ 11 のために両側板 3, 4 が調車 5 を押えるにより 5 は軸 1 と共に回転す。
丁字形腕 2 は軸 1 上に遊動す。ロッド 7 の左右往復動は爪 4 によりて車 6 を矢の方向へ送る。小クランク 5 を 180° 廻さば 4 が上がりて 3 が車の内面に掛かるにより車 6 は前と反対の向きに送らる。
英人クリストファー・レーン子爵 Christopher Wren が西暦 1670 年 5 月王国学会に提出せし考案にして両軸 1, 2 に数回縄を廻ぐらして重き荷物 4 を上ぐるに当り縄の他端に少量の錘 3 を吊して縄の滑りなきを示す。この原理は所請コード摩擦にして現今広く用いらる。
ハンドル 7 にてクロス・ビーム Cloth Beam 4 と廻し布を巻く。5 はその輔に固定する爪車にして爪 6 はその巻戻りを防ぐ。ワープ・ビーム Warp Beam 2 に巻かれたる縄端の錘のために布は一定の張力に張らる。摩擦により縄は滑ることなし。(597) を見よ。
掴み 3, 3 の取付く 5 が左右へ動くときは線金又は鋼索を左方へ送る。定位置にある 4 の掴み 2, 2 は鋼索の逆戻りを防ぐ。
左右の爪 3, 3 は縄を摘むにより四角の箱は縄 7 にその位置にて吊るさるるが、小縄 8 を曳くときは爪は緩みて箱は下る。西暦 1699 年ベルラゥルト発明す。(572) を見よ。
穴 2 を貫通する縄はコジレて縄の滑りを防ぎて錘 7 を吊す。鍵の上下は自在にして 7 を任意の高さに吊し得。吾国農家等にて火の上にヤカン、鍋等を吊すに古より慣用せらる。
(左図)定長の縄 4 にて吊さるる鍵 2 はコジレて垂直棒 1 を吊す。
(右図)左図を改造したる形にして鍵と棒の間に駒 2, 2 を用いたれば支持力一層大な り。鍵を持上げて 1 を上下し得。
1 は静止すと定む。テコ 2 の右端を押し下げてコロ 3 を上ぐるときは縄又は棒 4 は自由に下り得。然るにコロ 3 を下ぐるときは之が 1 の楔状の溝に食い入りて縄又は棒 4 の落下を防ぐ。自在鍵の一種なり。
座金 4, 5 の間に木材等を挟みネジ 6 を締めて確と押え得。ただし腕 3 はコジレて 2 に止まる。
煉瓦を揃え取手 2 を以て運搬し得。1, 2 の間を広くしあるいは狭くすることによりて一度に握る数を増減し得。
左図において縄 2 の上下両端を張るときは球は吊られて任意の位置に静止し之を緩むるときは球は滑りて下る。その仕掛は右図により一見明瞭なり。電燈釣金物等に応用せらる。
(右図)蝶ネジ Wing nut 4 を締むるときは座金 3, 3 はゴム輪 5 を圧すにより之が張りて管 6 を閉づ。
(左図)蝶ネジ 4 を締むるときはゴム栓 5 は圧されて横に広がり壜ロ 6 を密閉す。
ロッド 5 を強く引くときはブレーキ・シュー(Brake Shoe)3 は回転する車輪を圧し摩擦を生ぜしめて把止作用を為さしむ。車体及び車輪等の運動エネルギーを摩擦消耗仕事に化して車の進行を止む。
上述のブレーキはロッドを強く引くときは車輪を一方へのみ押し結局軸受に強大なる圧力を加えて過熱せしむる欠点あり。本図に示すものはロッド 8 を引くときは左右のシュー 9, 9 は相向いて車輪を押すにより車軸の曲け作用及び軸受メタルに強圧を生ぜしめず。ブレーキの作用するや小軸 12 は直線 10.11 に近づきて角 11.12.10 が平角に近き鈍角を為し即ち肘張テコを形成するによりリンク 8 を引く力は 9, 9 において強大なる圧力を生ぜしむ((70), (71) と同理なり)。
輪 2 は軸 1 に固定して共に回転す。半円形の張片(ブレーキ・シュー)5 の上端は固定ピン 3 に緩く蝶番せられ下端はカム 7 を挟む。固定軸 4 にはカム 7、テコ 8、ロッド 9 が取付く。図の位置にありては軸 1、輪 2 は自由に回転するが、ロッド 9 を左方へ強く引くときはカム 7 が 5, 5 を張りて 2 の把止作用を為す。引張バネ 6 はカムの作用せざるとき 5, 5 を内方へ引張りて 5 と触れざらしむ。
鉄板の帯(バント)3 は車のリムを巻く。テコ 7 の柄を下に(矢の方向)押すときは板 3 は把止作用を為す。起重機又荷揚機の把止めに応用せらる。4 は固定ピン。帯金把止 Strap Brake の別名あり。
テコ 7 端に力 P を加うるときは把止作用を為す。ブレーキ・シューは木材、革を用いるを普通とするが強力を要するものには鋳鉄又鋳銅製とす。
ナット 3 を締むるときは軸 1 は歯車 2 と共に回転するがナット 3 を緩むるときは 2 が廻るも 1 は廻されず。工作機械刃物送り装置等に応用せらる。
2 は垂直軸に作りたるネジ面にして上下両軸受によりて垂直に動き得。1 は水平軸端の円錐にして螺旋面と接触す。1, 2 が滑べりなきものとすれば 1 の回転は其の向きによりて 2 を回転しつつ上下に運動せしむ。
摩擦車 1, 2 は同一直線を軸とし車 3, 4 の輪周はゴム又は之に類する材料にて圧縮バネ 6 によりて 7 を中心とする球面車 5 が押す。軸 7 を振りて 1, 2 の回転速比を変化す。
軸 5 の左端はピッチ(刻み)粗きネジ 3 は駒 4 と組む。4 と 1 の胴はキー 9 と溝によりて滑りツガイを形成し 4 は 5 の軸方向にのみ動く。6 は圧縮バネ。摩擦傘車 1, 2 は圧縮バネ 6 の力にて互いに押す。軸 5 が矢の向きに廻るとバネ 6 に抗して 1 は 2 を押して廻す。捩りモーメントが増大すると 4 を押す力も増し、従て 1 が 2 を押す力が増す。
圧縮バネ 3 は筒 2 を右へ圧しその間に緩く容れられたる数多くの球 1(1 は 2 より抜け得ず)は円錐 5 の助けにより線金 6 を掴む。6 を右方に曳けばこの掴む力は益々増加す。
テコ 1 の下端に菱形片 5 が鋲付せらる。5 の幅は水平にのみ運動する長枠 2 の内璧間よりも少しく狭い。1 の上端を左に押せば 5 は 2 と共に左方へ送らるるが 1 を右に引けば 5 は 2 内を滑りて左方へ移る。
テコ 5 の右端を下方へ押せば制動片 41, 42 が車 1 を押しブレーキがかかる。又 5 を上方に上ぐればブレーキは緩む。
ベルクランク 7 の右端を押せば制動片 21, 22 は回転車 1 を押し之を遅くするか又は静止せしむ。7 の右端を上げれば 21, 22 は車 1 より離れてブレーキは外づる。