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第二十八類 複式機構 Compound Mechanisms.

複式機構は二個以上の機構組合にして被動者に特種の運動を為さしむ。特別の場合には簡単なる機構にては容易に仕遂げ能わざる程度に著しく力比又は速比を大ならしめ得。

720. 二重テコ鋏み盤 Double Levers Shearing Machine.

図. 二重テコ鋏み盤

剪刃間に板金を挟みテコ 5 を下げて剪断す。略算にて、次式あり

R/P = 12×35:16×34

721. 二重テコ Compound Levers.

図. 二重テコ

図示の如く下のテコの力点を上のテコの重点とするときに下のテコの重点における荷物 W は上のテコの力点に加わる力 P に十数倍す。

W/P = (b/a)×(d/c)

722. クランク半径の四倍を進むラック

図. クランク半径の四倍を進むラック

歯車 5 はラック 6, 7 に組む。下部の水平ラック 6 は固定し上部の水平ラック 7 は左右に往復運動を為す。7 の往復運動の幅はクランクの半径の四倍なり。依て小なるクランクにてラックに長き行程の往復運動を与う。

723. 定滑車と動滑車の組合(其一)Reduplication of Pulleys.

図. 定滑車と動滑車の組合1

(甲)縄 4 を曳く力は之と約同一の荷物を揚ぐ。之複式機構にあらず。

(乙)縄 4 の端を曳く力はその約二倍の荷物を揚ぐ。1 を定滑車、2 を動滑車と称す。

724. 同(其二)

図. 定滑車と動滑車の組合2

(甲)縄 4 の端を曳く力はその約二倍の荷物を揚ぐ。

(乙)縄 4 の端を曳く力はその約三倍の荷物を揚ぐ。1 は動滑車にして 2, 3 は定滑車なり。

725. 同(其三)

図. 定滑車と動滑車の組合3

(甲)縄 5 の端を曳く力はその約三倍の荷物を揚ぐ。

(乙)縄 5 の端を曳く力はその約八倍の荷物を揚ぐ。2, 3, 4 は動滑車にして 1 は定滑車なり。

726. 同(其四)

図. 定滑車と動滑車の組合4

(甲)縄 4 の端を曳く力はその約三倍の荷物を揚ぐ。1 は動滑車、2 と 3 は定滑車。

(乙)縄 4 の端を曳く力はその約七倍の荷物を揚ぐ。2, 3 は動滑車、1 は定滑車。

727. 同(其五)

図. 定滑車と動滑車の組合5

(甲)縄 4 の端を曳く力はその約四倍の荷物を揚ぐ。

(乙)縄 4 の端を曳く力はその約五倍の荷物を揚ぐ。ただし 23 の縄も垂直なりと定む。

728. 同(其六)

図. 定滑車と動滑車の組合6

(左図)縄 5 の端を曳く力はその約五倍の荷物を揚ぐ。1 は軸を共有する二枚の動滑車、2 は軸を共有する三枚の定滑車。

(右図)縄 5 の端を曳く力はその約四倍の荷物を揚ぐ。ホワイト・セミと言う((730) を見よ)。

729. ブロックとセミ(ブロックとタックル)Blocks and Tackle.

図. ブロックとセミ

縄 4 の端を曳く力はその約三倍の荷物を揚ぐ。前面、側面、両面において 3 は動滑車にして 1, 2 は軸を共有する定滑車。3 の部分をブロック、1, 2 の部分をセミ(タックル)と言うを可とすれどもこの区別を混同す。巻きセミ Winding Tackle の別名あり。

730. ホワイト・セミ “White” Tackle.

図. ホワイト・セミ

縄 6 の端に加えたる力はその約八倍の荷物を揚ぐ。2 は軸と共有する四枚の動滑車、1 は軸を共有する四枚の定滑車。ホワイトの発明なり。

731. チャイニーズ・ウィンドラス Chinese Windlass.

図. チャイニーズ・ウィンドラス

水平軸 1 に取付くドラム(円筒)2, 3 は直径を異にす。之を矢の方向に廻すときは動滑車 4 は上がり、又之を反対に廻すときは下がる。本機は比較的小なる力にて甚だ重き荷物を上げ得。

732. ウェストン・チェーン・ブロック “Weston” Chain Block.

図. ウェストン・チェーン・ブロック

2, 3 は一体を為す鎖車。1 は遊動鎖車にして図の如く鎖が掛かる。4 を曳き下ぐるときは 1 は 4 に加わる力の十数倍の荷物を揚ぐる。5 を曳き下げるときは反対に荷物が下がる。西暦 1859 年ウェストンの発明なり。ウェストン差動セミの別名あり。

733. 水圧エレベーター Hydranlic Elevator and Pulleys.

図. 水圧エレベーター

ロープ(綱)を 685878 の順序に滑車に巻き付けて右端 8 に荷物を吊す。水圧シリンダー 1 内をピストン 3 が動く。ピストン・ロッド右端は動滑車 5 の軸と連結す。2 の部に高圧の水を入るるときはピストン面の全水圧力のため 3, 4, 5 は左方に動き縄 8 にて全水圧力の約半分の重量の荷物を揚ぐ。

734. トロットン差動ネジ “Troughton” Differential Screw.

図. トロットン差動ネジ

1 は毎時三十山、2 は毎時四十山の右ネジ。1 を廻すことなくしてネジ 2 のみ一回転するときはネジ先は (1/30 - 1/40)= 1/120 百二十分一時進退す。

735. 差動ネジ Differential Screws.

図. 差動ネジ

1 は毎時三十山、2 は毎時四十山の右ネジ。之を一回転する毎に 3, 4 両針の距離は 1/30 - 1/40 = 1/120 百二十分一時増減す。又 1, 2 の何れか一が左ネジなれば 4 針の進退する距離は 1/30 + 1/40 = 7/120 百二十分七時なり。

736. 二個の芋虫車の微動仕掛

図. 二個の芋虫車の微動仕掛

1 は百枚の歯。2 は百一枚の歯を有する同大の芋虫車にして何れも同一の芋虫 6 と組む。(歯数多きにより少しの緩みを与うるときは同一の芋虫と組ましむこと容易なり)。1 及び 2 に属する針 3 及び 4 は始め互と重なり合うも 6 の一回転に食違いて針 3 が針 4 に対して進み関係的に 1 が 2 に対し一回転して再び両者が合するまでには芋虫 6 は 100×101=10,100 回転す。

737. 中グリバイト送り装置 Feed Motion for Boring-tool.

図. 中グリバイト送り装置

円柱 7 に環 6 が嵌まる。6 はネジ 5 と組む。平歯車 2, 3 は一体にしてそれぞれ平歯車 1, 4 と組む。環 6 に刃物を取付く。7 が回転するに伴れてネジ 5 は関係的に回転し環に取付けられたる刃物を送る。

738. 連動リンク装置

図. 連動リンク装置

平歯車 1, 2, 3 はこの順に組む。各リンク 4, 5, 6 の下端は平歯車の面より突起するピンと蝶番せられ歯車の回転によりてロッド 8 は特種の上下往復運動を為す。三個の歯車の歯数異なるときはロッド 8 は各行程毎にその行程の長に相違ある往復運動を為す。

739. ファーガソン不思議車 “Ferguson” Mechanical Paradox.

図. ファーガソン不思議車

平歯車 1 は固定平歯車 1 と同数の歯を有し 3 は一枚少なく 5 は一枚多し。何れも中移平歯車 2 と組む。腕 6 を矢の方向に右に一回転するときは 4 は少しも回転せず((744) を見よ)之に対し 3 は歯一枚左に進み 5 は歯一枚右に進む。3, 4, 5 は歯数多きにより一見同一のものと見誤られ而して以上の結果を見て不思講の感を為す。

740. スウァディ楕円製図器 “Suardi” Ellipsograph.

図. スウァディ楕円製図器

平歯車 4 は平歯車 5 の二倍の歯数を有し 2 は中移動平歯車。腕 1, 3 の角度は種々に変じ得るが一度定むるときは変化なき様仕組む。即ち 4, 5 両軸の距離を任意の長にし得。針 8 の桿 9 は平歯車 5 と共に回転し抜差自在にしてネジにて固定す。平歯車 4 を静止して腕を一回転すれば針 8 は楕円を描く。

この機構の特別の場合が (267) なり。

741. 楕円製図器 Ellipsograph.

図. 楕円製図器

1, 2 及び 5 はそれぞれ相等しき傘歯車。6 はその半分の歯数の傘歯車。2, 5 両者は水平軸 11 と共に回転し 1 は静上す。縦軸 7 は 6 と共に回転す。枠 2, 3 を 10 の周囲に一回転せしむるときは 9 の先端は長半径 a+b, 短半径 a-b の楕円を書く。ただし a, b は任意に変化し得。

742. エントウィスル歯車装置 “Entwistle” Gearing.

図. エントウィスル歯車装置

2, 3, 4 は同大の傘歯車。3 は軸 1 上に遊動し 4 は軸 1 より突起するピン 5 上に遊動す。2 は静止す。調車 8 の一回転は調車 6 を同方向に二回転せしむ。

743. 日月歯車装置 Sun-and-planet Motion.

図. 日月歯車装置

平歯車 4 は軸 1 に固定しクランク・アーム 3 は軸 1 上に遊動す。連桿 6 端に取付けられたる 4 と同大の平歯車 5 はクランク・ピン 2 の軸上に回転す。クロス・ヘッド 7 の一往復運動によりて 3 は一回転を為すが軸 1 は歯車 4 と共に同一方向に二回転を為す。西暦 1781 年英人ジェームス・ワットが始めて蒸気機関のクランクに代用せり。

744. 不回転三歯車列

図. 不回転三歯車列

相等しき平歯車 1, 3 はそれぞれ中移平歯車 3 と相む。而してこれらの歯車の軸は腕 4 より出づ。歯車 1 を固定して腕 4 を回転するときは歯車 3 は軸 1 の周囲を運動するも自身は回転せずして移動のみを為す。即ち歯車 3 の面に上向の矢を描くときは 3 の何れの位置においても矢の方向は一定不変なり。

(739) において 1, 2, 4 歯車列と同一なり。

745. エピサイクリック・リバーテッド・ギヤ Epicyclic Reverted Gear.

図. エピサイクリック・リバーテッド・ギヤ

水平軸 1 と一体なる腕 3 より突出するピン上に平歯車 15, 15 が回転す。30 は自転車の枠に取付けられたる固定平歯車。内向歯車 60 はスプロケットと一体なり。15, 30, 60 の各歯車はそれぞれその数だけの歯を有す。クランク 2 を一回転するときは 60 は一回転半す。

746. 外転シクロイト歯車(エピサイクリック・トレイン)Epicyclic Train.

図. 外転シクロイト歯車

傘歯車 5 は平歯車 3 内にありて且その軸と直交するピン上に回転す。平歯車 2 を静止するときは軸 8 の回転は軸 9 を反対の方向へ 8 と同じ速度に回転せしむれども平歯車 2 を回転するときは軸 8 が同一方向に一定の速度にて回転する場合に軸 9 は左右何れにも緩急自在に回転せしめ又静止せしめ得。

747. ディファレンシャル・ギヤ(差動装置)Differential Driving Gear.

(746) 図による。ただし平歯車 2, 3 の代わりに傘歯車を以てするにより軸 2 は軸 8, 9 に直交す。傘歯車 6, 7 の軸 8, 9 は傘歯車 2 をその上に遊動せしめ且両端相向う。傘歯車 1 は 2 を廻し之によりて 8, 9 は通常同一速度で回転するが 8 が 9 よりも遠く回転し得。自動車において曲がり進行を為すに 8 を 9 よりも多く廻して車輪が滑らずに急に曲がり得る仕掛として後車輪駆動に用いらる。この場合 3 はプロペラー軸なり。

748. 同(其二)

図. ディファレンシャル・ギヤ2

平歯車 1 は固定軸 9 に取付く。テコ 7, 6 は軸 9 を軸として回転す。平歯車 5 と 7 は一体なり。6 に突起するピン上に一体を為す平歯車 3, 4 が回転す。4, 5 は組み、3, 2, 1 を順次に組む。テコ 6 を左右何れにか一回転するときは歯車 3 は 1, 3 両車の歯数の差だけ廻る。因て同時に 4 も廻るより之に組む 5 は廻りてテコ 7 は一定の歯数だけ廻る。例えば 6 を右廻し一回毎に 7 を左廻に歯数 1 枚ずつ送り得るが如し。

749. キャプスタン歯車装置(車地歯車装置)Capstan Gear.

図. キャプスタン歯車装置

平歯車 7 は軸 1 に固定す。三個の平歯車 8, 8, 8 は軸 1 上に遊動する腕 10 より出でたるピン上に回転す。2 は内向歯車 9 を有し外周は爪 5, 6 等の組を為し軸 1 上に遊動す。2, 8 は組む。2 を静止して腕 10 を回転するときは軸 1 は急速に回転す。之に反して 2 を回転するときは軸 1 は甚だ遅く回転するにより軸 1 の回転モーメントを甚だ大ならしめ得。

750. 製縄機(其一)Rope Making Mechanism.

図. 製縄機1

腕 3 より出でたるピン上に回転する平歯車 4 は何れも静止せる内向平歯車と組む。平歯車 4 は糸巻き 5 と共に回転す。軸 1 を回転するときは撚子は縒(ヨリ)掛けられつつ全体はヨリの方向と反対に回転して三本ヨリの縄を作る。

751. 同(其二)

図. 製縄機2

中央の平歯車 1 は静止軸端に取付けらる。円板 7 は綱車 6 と一体を為し共に軸 1 上に回転す。平歯車 2, 3 は円板 7 上に突起せるピン上に回転す。6 を回転するときは各糸巻きは自転しつつ之と反方向に軸 1 の周囲に回転するにより縄をヨリ得。

752. 同(其三)

図. 製縄機3

上述の機構を応用して作られたる製縄機械は左図の如く構造は上者と大同小異なり。製縄機械の発明者は力織機の発明者英人エドムンド・カートライト Rev. Edmund Cartwright なり。

製縄機械を原名コーデリーア Cordelier と言う。

753. 外転シクロイド傘歯車仕掛 Epicyclic Bevel Train.

図. 外転シクロイド傘歯車仕掛1

1 は水平軸 8 の左端の平歯車。4, 5 は相等しき傘歯車。平歯車 2, 3 はそれぞれ 4, 5 と一体をなし何れも軸 8 上にその位置にて回転す。傘歯車 7, 7 は 6 より軸 8 に垂直に出でたる小軸(この両軸及び 6 を総称してアームと言う)上に回転する相等しき傘歯車平歯車 2, 3 が反対の方向に回転するときは 1 は両者 2, 3 の回転の差の二分の一だけ回転しその方向は回転数の多き方に同方向なり。もしも 2, 3 両歯車が同一方向に回転するときは平歯車 1 は上者と同一の方向に両車 2, 3 の回転数の和の二分の一だけ回転す。

754. 同(其二)

図. 外転シクロイド傘歯車仕掛2

上述の機構と円錐調車 4, 5 を併用したる仕掛を示す。上述の 2, 3 は本機構においては傘歯車を為しそれぞれ 4, 5 の軸端における傘歯車と組む。軸 4 は動者なり。図において調帯 6 を軸方向に動かすによりて車 1 を静止し又は左右何れにてもある限度内に任意の速度に回転し得。

755. 同(其三)

図. 外転シクロイド傘歯車仕掛3

3 は軸 6 の左端の平歯車。傘歯車 5 と平歯車 2 は一休を為し 6 の水平軸上にその位置において回転す。傘歯車 7, 8 は一体を為し 6 の水平軸より直角に曲がれる小軸(之をアームと言う)上に回転す。平歯車 1 と傘歯車は一水平軸に取付けらる。

両車 1, 2 が共に動者にして両者の回転の速度、方向を変ずることによりて 3 を静止せしめ又左右何れにも任意の速度に回転せしめ得。

756. 同(其四)(別名 ハムベージ・ギヤ) “Humpage” Gear.

図. 外転シクロイド傘歯車仕掛4

軸 1 は傘歯車(戊)に固定し軸 2 は傘歯車(丁)に固定し軸 4 は両軸 1, 2 に関係なく回転す。傘歯車(甲)はケース 3 に取付く。歯車は甲と乙、乙と戊、丙と丁とが組みて乙丙両車は一体にして軸 4 より出づる軸 5 上に回転す。

甲、乙、丙等を以てそれぞれ傘歯車甲、乙、丙等の歯数を示し而してケース 3 を停止せしむるときは

(軸 2 の毎分回転数)/(軸 1 の毎分回転数)=(1-甲×丙/乙×丁)/(1+甲/戊)

ケース 3 を回転せしむるときは上式の速比を一層小にし得。

757. 同(其五)

図. 外転シクロイド傘歯車仕掛5

図において 250, 33, 40, 12, 40, 303 はそれぞれこの数に相当する歯数の傘歯車なり。

軸 2 が 262,500 回転する毎に軸 1 は一回転を為し腕(アーム)は 10,000 回転を為す。

758. 差動セミ Differential Pulley Block.

図. 差動セミ1
図. 差動セミ2

軸 1 は釣枠 7 上に水平に回転し之に鎖車 6、偏心円板 2 が固定し共に回転す。内向歯車 4 と鎖車 5 は一体を為し軸上に空転す。2 と回りツガイを為す平歯車 3 は 4 と組む。円板 10 は 1 が貫通し上部の腕形片は 7 を挟む。3 より突出するピン 9 は 10 の堅溝に入るにより 3 は回転せず。6 に掛かる鎖を曳けば 5 に反対の向に掛かる鎖を甚だ大なる力に抗して巻揚ぐ。

3, 4 の歯数をそれぞれ b, c とせば 6 の一回転は 5 を反方向に (c-b)/c 回転せしむるにより力比甚だしく増す。7 を固定枠とし転置し且 6 を枠外に出して調車とし 5 を正歯車とすれば 6 の高速回転を 5 の甚だ遅き回転に変じ得。

下図は本機構と同一構造のバルカン高速巻上機 “Vulcan” High Speed Chain Hoist にして右図の相等しき歯車は左図のエキセンを廻し之によりて内向歯車の中心は中心軸の周囲に回転するが、内向歯車は回転せずに移動のみを為し之によりて中央の平歯車を静かに廻す。

759. サン・アンド・プラネット・ハンドル Sun and Planet Handle.

図. サン・アンド・プラネット・ハンドル

歯車 a は静止し歯車 d は軸 1に固定し二歯車 b, c は一体を為して軸 1 上に遊動するアーム f より突出づるピン 2 上に遊動す。ハンドル(取手)g の回転は軸 1 の甚だ遅き回転を生じ力比著しく増す。a, b, c, d を各歯車の歯数とせば、

a d f
1 の静止のとき -1 -(ac)/(bd) 0 回転
四個歯車が同時に一回転するとき +1 +1 +1
結局(二式を加えて) 0 1-(ac)/(bd) +1
図. スチーブンソン・リンク装置

起動テコ 16 を図の如く右に寄するときはエキセン 11 が主としてリンク 7 のスロット 17 に作用して摺動弁 2 を被動するために機関車は前進す。即ち車 18 は矢の方向に回転す。16 を左に寄するときはリンク 7 は上がりてエキセン 12 が主としてスロット 17 に作用して 2 を動かすにより 18 を矢と反対の方向に回転し機関車は後退す。16 を中央に置くときは車 18 は回転せず。16 を右又は左の極より次第に中央に移すに従いシリンダー 4 内への蒸気の遮断を早む。スチーブンソン之を発明す。

図. グーチ・リンク装置

このリンク装置の上者と異なる点を掲ぐればリンク 7 が前者と反対に反りてその円弧はリンク 9 の長さを半径とす。釣棒 6 はリンクの中央を吊る。図において外側のエキセン 11 が主として作用して機関車は前進す。即ち 18 は矢の方向に回転す。ロッド 11 を矢の方向に曳くときはベルクランク 5, 5 によりてリンク 6 は下げられてスロット 17 にはエキセン 12 が主として作用して機関車は後退す。ロッド 15 の移動の位置によりてシリンダー内に入る蒸気の遮断の度を種々に加減し得。然れども蒸気リードの一定なる事(スチーブンソン式はスロット 17 の位置によりてリードに相違あり)が本機の特長なり。

762. クランク半径の四倍を行程とするピストン

図. クランク半径の四倍を行程とするピストン

クランク・ピン 2 はテコ 3, 4 の中央にあり。クランク 12 の一回転はピストン 5 に一往復運動を与えその行程はクランク半径 12 の四倍なり。

763. 映画撮影機の送り爪機構 Claw Mechanism of Moving Picture Camera.

図. 映画撮影機の送り爪機構

互いに組む相等しき平歯車 1, 2 より突起するピン 3, 4 は軸心 1, 2 と同時に同一直線上にあり得る様にす。テコ 5 はピン 3 を軸としその右側には曲溝を、左側には爪 6 を有す。図示の回転方向においてピン 3 が左死点 D1 より右死点 D2 に至る間に 6 が直線 1, 2 に並行なる直線イロを描く様に曲溝の形を定めればピン 3 が上半円 D1FD1 を動くとき 6 は直線イロを難れロハニイの運動を為す。斯くして平歯車 1 の回転の爪 6 を間欠的に水平方向イロに動かす。映画フィルム焼付の送りにこの機構を用う。

764. ピストンの死点に近き点にて多大の圧力を与える仕組

図. ピストンの死点に近き点にて多大の圧力を与える仕組

両軸 1, 2 の相等しき平歯車 3, 4 は相噛合い、溝カムはテコ 6 を上両端において休息せしむ。エキセン 8 はピストン 7 を下方の死点近くに強く圧す。

765. 二個のエキセンにてその半径の四倍の行程をなす装置

図. 二個のエキセンにてその半径の四倍の行程をなす装置

一個の相等しき平歯車 1, 2 は組みてリンク 3 より突起する小軸上に廻る。軸 4, 5 はそれぞれ両軸 1, 2 より等距離 a にあり且 1, 2, 3, 4 の中心は同一直線上にあらしむ。ピン 5 はスロット 6 にて軸 1, 2, 3, 4 方向に動く。軸 4 の一回転はスロット 6 に行程 4a の往復運動を与う。本機構は比較的小締りしたる機構にて長き行程の直線運動を為す。

766. 両端にて休息するスコッチ・ヨーク

図. 両端にて休息するスコッチ・ヨーク

平歯車 3 は平歯車 4 の二倍大にして静止す。クランク 12 は軸 1 を中心に回転す。4 の軸 2 はそのクランクピンなり。4 の面より突起するピン 5 はスコッチ・ヨーク 7, 8 のスロット 6 のピンを形成す。

クランク 12 の等速一回転はロッド 8 にその両端において殆んど休息する一往復運動を与う。ただし 5 の中心の軌跡は図示の如き楕円なるにより其性質が直ちに理解さる。

767. 行程が次第に増加したる後次第に減少する往復運動

図. 行程が次第に増加したる後次第に減少する往復運動

平歯車 1, 2, 3, 4, 5 は図示の如く組む。2 の軸心は 1 の直下にあり、その軸受 7 は水平に滑動す。2, 3 軸の相等しきエキセンの外輪をロッド 6 が連絡す。1 の回転により 2, 3 は歯数差一枚なる為に 7 は行程がゼロより次第に増加してエキセン半径の二倍に達し再び減少してゼロとなる往復直線運動をなす。

綿織物機に応用さる。