本類は出口及び入口を有するケーシング(密閉室)内にピストンあるいは羽根の回転して送水もしくは送風を為すものを集む。又前と逆に出口に相当する口より圧力ある蒸汽、圧縮空気又は水を入れて入口に相当する口より之を吐出さしめて回転式原動機と為し得たるもの其他之に類するものを集む。読者は逆用し得る事をも容易に会得せられん。
17 世紀中頃においてパプペンハイム D. Bechre. Machine Pappenheim の記録を以て始めとするが同氏の発明たるや否は明ならず。独人ワィスバッハ博士は之をブラマー回転ポンプ Bramah’s Rotary Pump と言えり。ケース(ポンプ室)内の相向って回転する歯車をピストン Piston と称す。下は吸込口、上は吐出口にして両ピストンは右は左廻、左は右廻に相向って回転す。下図の平面図に見る如くピストンの軸に同大の平面車が取付けられて組むにより両ピストンは相向って等速に回転す。給油ポンプ、小型ポンプ等に応用せらる。
ケース内の右ネジと左ネジの角ネジの両ピストンは同大の平歯車によりて相向って等大に回転す。図面において水は下口より入りて上口より吐用さる。この形にては軸方向に反力が作用するにより之を打消す目的にて左ネジ、右ネジを一軸に取付けて両側面より水を吸込みて中央より吐出す式のものあり。之をクインビー・ポンプ Quimby Pump と言う。
二個の三角形ピストンが相向い同速度にて回転す。空気は下口より吸い込まれ上口より吐出さる。白国人ファブリーの発明なり。
上者はピストンが一点にて触るるが故に旧式にして本型は両ピストンが二点にて相触るるが故に逆流少なく新型なり。大型の一例を示さんに外径三ないし四メートル、幅二ないし三メートル、毎分回転数三十ないし六十のものが造られたり。
二個の相等しき瓢形ピストンが右は左廻、左は右廻に相向って同一速度にて回転す。空気は下口より入りて上口より吐出せらる。英人ルーツの発明なり。
ルーツ新型なり。上者と異なれる点は両ピストンが二点にて触れ且周囲も円筒面にてケース内壁に接するが故に逆流比較的少なし。
西暦 1867 年巴里博覧会に英国より出品せしを初めとす。両ピストンは相向って等速に回転す。一回転の水量はピストンの描く円柱の体積と殆ど同一なり。ピストンの羽根の曲線は等角曲線(対数曲線とも言う)にしてその周の接線と動径と為す角 15° なり。
西暦 1867 年巴里博覧会に白国より出品せる通風機なり。両ピストンは相向って 矢の方向に同一速度にて回転す。本機はポンプにも応用せらる。
両ピストンは相向って右は左廻に左は右廻に同一速度にて回転す。英国においてはかつて水車として又ガス送用ポンプとして用いたり。
中央の両欠円体は静止し半月状ピストンが相向って等速に回転す。このポンプは直線を以て接触せずして面を以て接触するにより逆流少量なり。米人ベェレンの発明なり。
左ピストンの胴の直径(三個の突起を除ぞきたる円筒)は右ピストンの直径の三倍にして右軸と左軸は 1 と 3 の比の歯数の歯車が取付き互いに組合うが故に左ピストンの一回転に対して右ピストンは三回転す。両ピストンは相向って回転す。水は下口より吸込まれ上口より吐出さる。
西暦 1825 年米人イーヴの発明なり。
円柱ピストン 1 はケースと内接す。ピストン 1 の軸は円筒 2 の両壁を貫通す。羽根板 31, 32 の両縁は円筒 2 の両壁に触れ且両者は圧縮バネ 4 にて押さるるが故にその端はケース 2 の内壁に触る。給気 5 より蒸気を入るれば羽根 31 は押されて矢の向きに動く。7 内の廃気は吐出口 6より排出す。ピストン 1 の軸に錐を取付け圧縮空気を用いて可搬用錐に応用するものをブラッドフォート空気錐 Bradford’s Air Drill と言う。
(701) のピストン 1 とドラム 2 と同軸線にし且出入両口の間を相接せしむ。1 の矢の向きの回転によりて水又は空気は 5 より吸込まれて 6 より吐出さる。
偏心軸のピストン 1 は円筒 3 の内壁に接しつつ回転す。羽根 3 は自己の重力又は圧縮バネによりてピストン面に接触す。蒸気は 5 より入りてピストンを押し之を廻し廃気は 6 より逃げ去る。ピストンを回転すればポンプとして利用し得。
上図の円柱ピストンの代りにカム・ピストン 1 を以てす。本機は蒸気もしくは高圧空気と 5 より入れてピストンを回転せしめ得。廃気は 6 より逃げ去る。ピストンを回転してポンプと為し得。
ピストン 1 は円筒 2 に偏心に取付き且相接す。羽根が右側に移れば閉じ左側に移れば開く(バネ又は遠心力を利用して)。蒸気又は圧縮空気は 5 より入りて 6 に逃げ去りピストン 1 を回転す。逆にポンプに利用し得。
ピストン 1 は円筒 3 と同軸なり。蒸気又は圧縮空気は 5 より入りて羽根を押し動かして 6 より逃げ去る。因てピストン 1 は回転す。逆にポンプに利用し得。
ピストン 1 と円筒 3 とは同軸なり。ピストンより出てたる突起 3 は円筒の内壁と触る。弁 4 は重力又はバネの助けによりて常に円筒面に触る。突起 3 はこの弁を押して通過す。蒸気又は圧縮空気を 5 より送らばピストン 1 は回転す。廃気は 6 より逃げ去る。
(701) と同一設計なり。ピストンとケースの接点の外に羽根も接して蒸気が入口より直接に出口に漏洩する量を少なくす。羽根は圧縮バネにて押出さるるかあるいは遠心力にて出づる様にす。ポンプにも応用せらる。
軸 7 はケースと同軸線なり。偏心軸 4 は 7 に固定す。円筒ピストン 1 は振板(シャッター)3 を挟みて之と摺動し且 1, 4 は回りツガイを為す。軸 7 を矢の向きに回転すれば水は 5 より吸込まれて 6 より吐出さる。バートラム・アンド・ポーエル機関 “Bartrum & Powell” Engine とも言う。
エキセン 1 のストラップ 4 より出でたる板 3 は半円柱状の弁 7 に挟まれつつ摺動し且つ揺動す。1 を矢の向きに回転するときは水は 5 より吸込まれ 6 より吐出さる。回転蒸気機関とせる場合はホーレスター回転蒸気機関 Forrester と称せられる。3 端を円柱とし 3, 7 を回りツガイとし 7 を 2 と滑りツガイにするものをパチソン・ポンプ “Pattison” Pump と言う。
エキセン 1 のストラップ 4 より出づる板 3 はV字形溝 7 に触る。1 の矢の向きの回転は 5 より水又は空気を吸込みて 6 より吐出す。出口の圧力と吸口の不全真空が 3 を 7 の一側に押付ける。
羽根板 3 は円筒 3 と同軸線の軸にて回転す。円筒 4 の両端は 3 の両側面に浅く穿てる円溝内に差込まるるにより其位置にて廻る。5 より入る蒸気は 2 を右回転して 6 より排出す。2, 7 の構造は (709) と同一なるが之を欠くものもあり。
円筒(ドラム)2 と偏心を為すピストン 1 にて四個のコロ 3 が僅小の緩みにて挟まる。ピストンを矢の方向に回転するときは遠心力によりてコロは円筒内壁に触る。水は 5 より吸込まれて 6 より吐出さる。
ピストン 1 と弁 2 はその軸端の相等しき歯車の組によりて相向って回転す。蒸気は 4 より入り 6 を経てピストン 3 を押すにより 1 は回転す。2 が進めば蒸気は遮断せられ 3 が吐出口 5 に面するまで蒸気は膨張し然る後吐出管 5 より吐出づ。ピストン 3 は蝶番せられたる二片より成り下位にてはケース内面に触れ上位にてはケース内面より離れ 7 部の圧縮なからしむ。
ピストンは三個の凸起と三個の凹部を有し両者相向って回転し下の吸込口より水を吸込みて上の吐出口よりの吐出す。逆に圧力ある水又は蒸気を上の口より入れて両軸を廻し得。(692), (690) より容易に転化し得る形なり。
中央に穴 4 あるケーシング 2 の内に羽根 1 を入れその軸を矢の方向に急速回転すれば空気は穴 3 より吸込まれて出口 4 より圧力を以て吐出さる。普通工場にて使用せらる。羽根の形状及び曲がりには種々の改良あり。離心ポンプと同様の理なり。
ケーシング 2 は円柱体の胴(ドラム)を為しその軸線と羽根の軸の軸線と一致す。羽根が矢の方向に回転するときは空気は両側の吸込口 4 より吸込まれて吐用口 5 より吐出さる。
ピストン 1 は数表の羽根を有し上図において示すが如く左廻す。水は吸入管 3 より吸われて下図に示すが如く左右に分かれて吸入口 5, 5 よりピストンの羽根の間に出で其の回転によりて圧力を生じ吐出口 6, 6 より吐き出だされ吐出管 4 に集まりて出づ。宇野澤組鉄工所では数多の実験の結果 7 の如き導子を取付くることによりて効率を甚だ大ならしめたり。以上は両側を流るる式なるが片側だけ流るる式をも造り得。