本類は軸が並行なる三個の回りツガイと軸が前三軸と直角なる一個の滑りツガイの組合より成る平面機構を集む。本機構の多数は蒸気機関、内燃機関等の如く往復直線運動を円運動に変ずるによりピストン・クランク機構の別名あり。又円運動を往復直線運動に変ず。
(甲)クランク 12 の一回転は連桿 23 によりてクロス・ヘッド 4 の一往復直線運動を生ず。
(乙)円板 1 に環状の凹溝を穿ち之にロッド 4 の左端丸ピン 2 が入る。又その右端 3 は溝 5 に入る。
(丙)3 の上下の突起はロッド 5 を挟む。
乙丙何れも甲と同一の運動を為す。
同一軸に取付くクランク 12 と 15 は直交す。クロス・ヘッド 4, 7 を動者とする往復運動はクランクを一回転するに死点にても回転力を失わず。汽車、蒸気機関、内燃機関等に応用せらる。
左右両者はその中心線互いに直交し且クランク・ピンを共有す。軸 1 が回転するときはクロス・ヘッド 4, 7 はそれぞれ住復運動を為す。本機構が汽機に応用さるるときは 4, 7 を動者とする各往復運動はクランク 12 を一回転するに死点にても回転力を失わず。鉱山用巻揚機、発動機に其例あり。
クランク 12 の一回転は連桿 23 によりてロッド 5 に往復運動を与う。
ある種のポンプ、蒸気機関等にありては図示の 4, 5 の部分が気筒(シリンダー)とピストンを形成するによりこの名あり。
ピン 3 の動く中心軸が軸 1 の下にある場合にはクロス・ヘッド 4 の行程の長はクランク半径の二倍よりも長し。クランクが矢の方向に優角 716 を回転するときに 4 は左より右に向いて前進し劣角 617 を回転するときに後退す。故に早戻り運動なり。(43), (46) を見よ。
クランク 12 の一回転はクロス・ヘッド 8 の一往復運動を生ず。クランクが等速に回転するときは 8 が矢の方向に前進する時間よりも後退する時間少なし。ただし 8 におけるピン 7 の運動する中心線はクランク 12 の軸 3 の中心を通過す。回り滑り子クランク・ツナガリ(ターニング・ブロック・リンケージ)Turning-block Linkage の別名あり。
クランク 12 の一回転は腕(アーム)36 に一振動を与う。 クランク・ピン 2 が優弧 9.12.10 を描く間に腕 5 は 13.6.14 の弧を運動し劣弧 10.11.9 を描く間に腕 5 は 14.6.13 の弧を運動す。揺り滑り子ツナガリ(スウィンギング・ブロック・リンケージ)Swinging-block Linkage の別名あり。ホォトウォールス早戻り運動の名にて平削機に応用せらる。
(66) と全く同一仕組なり。 本図上ありてはクランクは円板クランク 5 を形成しその一回転はベル・クランク 4.7.9 によりてロッド 10 に早戻り運動を与う。
左図。クランク 12 の一回転によりてテコ 5 はスロット 4 を支うる軸 3 を中心として左右に揺動す。
右図。揺動機関(オシレーティング・エンジン)を示す。
シリンダー 5 は紙面と直角を為す二個の軸にて支えられて揺動す。ピストン 4 の上下往復運動はクランク 12 を回転せしむ。ただしこの場合には重き径大なる勢車をクランク軸に取付く。
123456 は滑り子クランク機構。上下の 7, 5 はそれぞれガイド 8, 6 を摺動す。クランクの回転は帯鋸に上下運動を与う。バネ 10 は鋸を上方に引戻す用を為す。
1, 2, 8 は曲りテコ 12=23 にして摺動片 4 の下向運動の終においては三関節 1, 2, 3 は同一直線状にあり。本機は僅小の力にて非常に大なる力を出し得るよりプレス等に応用せらる。
二等辺滑りブロック(アイソセリース・スライディング・ブロック) Isosceles Sliding-block の別名あり。
(70) において曲りテコの代りにリンク 26 と曲りテコ 678 を用いたるプレスなり。
(70) は圧搾用。(71) は穿孔用を示す。
二個の滑りツガイ 4, 5 の軸 11.12, 9.10 は並行す。又 12:24=13:35。5 の直線運動は 4 に相似直線運動を与う。例えば 12 が 13 の三分の一なれば 4 は 5 の三分 の一行程の相似直線運動を為す。
4, 4, 3, 3, 1, 1 は回りツガイを為し垂直軸 9 と中心錘 10 とはキーとキー溝によりて滑りツガイを為す。軸 9 の回転速度に応じて左右球 3, 3 の遠心力は中心錘 10 をある高さに上げ両球は其の位置に安定す。然るに回転速度が減ずるときは両球は軸の方へ近よりて中心鍵錘は下がり之と反対に回転速度増すときは両球は開きて中心錘は更に上る。調速機に応用せらる。
(32) に説明せると同一の切欠ネジによりて尾栓 10 を砲にネジ込む。ハンドル 6 を手前に曳くときはまず連桿 4 がピストン 3 を右に移す、因て尾栓 10 と一体なるアームより突起せるピン 1、スロット 2, 3 によりて 10 は左廻してそのネジ外づれ次に 6 は尾栓付 7 を全部開く。又閉づるには前と反対にハンドル 6 を前に押せば蝶番 8 を有する 7 はまず尾栓 10 を砲尾に入れる次に 6 を更に押せば 4 及び 3 はピン 1 を廻して尾栓のネジをネジ込ましむ。3, 4, 5 は (71) の如き肘張接手を為すにより尾栓を最後に締付ける力甚だ強大なり。