本類は軸が並行する四個の回りツガイの組合より成る平面機構を集む。摩擦面の動く距離比較的小なるにより摩擦消耗仕事少なく且摩耗少なきにより永く使用に適す。さればなるべく本機構を用いて機械を作ること利なり。
本図は本機構を説明する簡単なる標本なり。
二個の回りツガイの組子を剛体にて結合したるものをリ ンクと言う。リンクの両端の軸線距離をリンクの長と言う。12 を最短リンク。14 を最長リンクとしリンク 14 を固定するときは 12 の一回転はリンク 34 を弧 78 の間に揺動せなむ。12 をクランク、34 を揺腕(ロッカー)、23 を連悍と言う。角 748 を揺腕の揺動角と称す。1, 2, 3 の三中心が同一直線上に重なる位置は死点にして 5 を第一死点、6 を第二死点と言う。このリンクの形及び固定の位置によりて以下示すが如き諸機械を生ず。
上図は (41) におけるリンク 12 を円板とせしものにして之を円板クランクと称す。この円板は多くは鋳鉄製にして工作上容易なるによりこの種の形を選ぶ場合あり。揺腕 34 は揺動によりてクランク 12 を連続的に回転せしめんとするには軸 1 に重く且径の大なる車(ハズミ車又は勢車 Fly Wheel)を取付くる必要あり。
中図は天秤機関にして (41) における揺腕の甚だ大なる場合なり。ビーム・クランク Beam and Crank の名あり。
下図はクランク揺腕の木製模型を示す。軸 1, 1 及び軸 7, 7 はそれぞれ軸受にて支えらるるものとす。ハンドル 8 を回転するときは揺腕 6 は揺動す。
(41) においてリンク 12 を固定したる形なり。クランク 14 の回転はリンク 43 によりてクランク 23 を曳きつつ之を回転せしむ。ピン 3 リンク 35 を取付けその端 5 が往復直線運動を為す如く仕組むときはクランク 14 の等速回転は 5 に帰りが往きよりも速き往復運動(之を早戻り運動と言う)を与う。
1, 2, 4, 5 何れも四ツ棒機構を形成す。7 は前後に側板を有する円筒、1 は両側板より突起する固定軸。六角柱 2 は軸 2 之を回転す。6 は扇板なり。2 を矢の方向に回転するときは下の吸口より入る空気は上の吐ロより吐き出さる。実際の構造にはピン 1 を拡大してその中を軸 2 が貫通する様に造る。
1, 2, 3, 4 は四ツ棒機構にして 1, 2 の軸線距離甚だ短かし。本機はフロート(水撹板)Float 5 が最も有効に水に作用す。即ち船が通行中フロートは水面に出入しその面は水平方向に水を後方へ推す。モルガン水輪の別名もあり。
クランク 12 が回転すれば揺腕 43 は左右に揺動す。而して揺腕 34 が 7 より右方 6 へ帰るには クランク・ピン 2 が劣弧 98 を又 6 より左方 7 へ進むには 2 が優弧 829 を運動するによりクランク 12 の等速回転において 5 の帰りは往きよりも速やかなり。工作機械等に応用せらる。
四辺形 3684 は各辺の長相等し、他も亦然り。1, 2 を少しく相寄するときは 3 は著しく左方に動く。本機は伸縮するも一直線上に配列せらるる各ピンの距離の比は一定なり。この機構を応用して左右に伸縮する扉を造る。縮図器等にも応用せらる。
テコ 3 と一体なるテコ 12 の回転の度盛を等分にし之に相応してテコ 45 の回転の度盛を見るに図の如く左に進むるに従い次第に狭まくなる。されば度盛の終りに近き位置にありてはテコ 23 の 3 点に加えらるる回転力は 45 の 4 点に強大なる力を生ず。ただしその位置は 1, 2, 4 三点が一直線に近く並ぶときなり。 西暦 1798 年英人スタンホープ卿之を印刷機に利用し強大なる力を以て紙面を版に押付け鮮明に印刷し得て印刷機械に進歩を促せり。
1234, 4356, 6789 は何れも四ツ棹機構なり。43=35。クランク 12 が一回転するときはテコ 34 は一往復、67 は二往復、9.10 は四住復の振動を為す。
21=14, 23=34 リンク 14 が固定し短クランク 12 が二回転するときは長クランク 34 は一回転す。シルヴェスター Sylvester はその形西洋凧に類似せるが故に之をカイトと名づけたり。
本図はハリガネキリにして容易に線金を剪断し得。その理は 6, 7 を握る力は 3, 4 において数倍大となり之が更に数倍せられて 1, 1 の剪断力と為るによる。圧縮バネは握る手を緩めるとき両刃先 1 を開く用を為す。
本機構は何れも (41) に示す機構のツガイの一つを異形に拡大もしくは変形せしめたるものなり。
甲は 4, 5 の弧形滑りツガイを以て揺腕に代う。乙は甲のクランク 12 を伸ばしリンク 23 を縮めて之を転置しリンク 12 を固定せしもの。丙はクランク・ピンを拡大して 3, 2 をエキセンとせしもの。丁はクランク軸を拡大して軸端の円板としクランク・ピンがそれより突出せる形。
ロッド 8 はエキセン 2 の偏心半径(円板 2 の中心と軸 1 の中心距離) の二倍よりも大なる幅の往復運動をなす。支点 7 の位置を変ずることによりて 8 の往復運動の幅を変化し得。
クランク・ピン 6 を突出するスロット 5 はネジにて雄ネジ 4 と組むによりクランク・ピン 6 と円板クランクの軸距離即ちクランク半径を種々に変じ得。依てクランクが動者と為りて回転し揺腕 27 を左右に揺動せしむるにあたりその振動角を種々に変化し得。
ナット 8 を緩むるときは扇形片(セクトル)5 はピン 4 を中心として振るによりクランク半径を種々に変じ得。ナット 8 を緩むればピン 6 は 3 に固着す。
窓 2 は窓枠 1 に蝶番せられ 3, 4 は肘関節なり。窓を左図の如く開き右図の如く閉じ得。3, 4 に関しては (22) を見よ。
実線の位置にては右側より腰掛け得るが転換寄掛を点線の位置に移さば左側より腰掛け得。