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第六類 並行クランク Parallel Cranks.

本類は相対するリンクの長がそれぞれ相等しく即ち平行四辺形を為す所の四ツ棒機構及び之に類するものを集む。この機構は相対するリンクが常に並行なること及び他のリンクに対して回転角速度一定なることが特長なり。

110. 並行定規(其一)Parallel Rule.

図. 並行定規1

12=34, 13=24 下の定規に対して上の定規は平行に移動す。製図において数多の並行線を書くに用いらる。

111. 同(其二)Three Part Parallel Rule.

図. 並行定規2

12=23=45=56, 14=25=36 下の定規を固定し上の定規にて並行線を書く。

112. 同(其三)Slotted Parallel Rule.

図. 並行定規3

並行の溝 4, 5 はそれぞれ緩みなく 4, 5 のピンが入る。この溝の中心線はそれぞれ 1, 2 回りツガイの中心を通過す。

13=35=23=34.

前二者と同様に平行線を書くに用いらる。

113. 折畳梯子 Folding Ladder.

図. 折畳梯子

左図は開きて梯子を形成し、右図は之を畳みて一本の棒となれるを示す。左右の棒及び横木は数多の並行リンクを形成す。

114. 自在階段橋 Self-adjusting Step-ladder Bridge.

図. 自在階段橋

数多の相等しきリンク 6 は其の両端 1.2, 3.4 と共に横梁に蝶番せらる。5 は踏板にして 6 と直角を為す。潮の満干により水面の高低一定せざる処において一端 12 を船又は木材にて支え他端 3.4 は岸に取付く。階段は舟の高低に係らず常に水平なれば踏み易し。

115. ロバーバル秤 “Roberval” Balance.

図. ロバーバル秤

34=12=56, 31=15=42=26

12 を垂直に固定し左右の皿を全く同一に造り且 1, 2 支点がそれぞれ直線 35, 46 の少しく上にあらしむ。左右の台に同重ならざる荷物を載するときは腕(アーム)は著しく水平に傾斜するも全く同重なるときは水平に平衡す。(40.2) を見よ。

116. 羽打水掻車 Feathering Paddle Wheel.

図. 羽打水掻車

12=34, 13=24. リンク 12 を水平に固定すれば 34 に直角に取付けられたる板 5 は常に垂直を為して移動すること 5, 6, 7 の位置に示すが如し。

外輪式船の水輪に応用せらる。

117. 自在製円定規 Universal Drafting-machine.

図. 自在製円定規

12=34, 24=13, 56=78, 57=68.

定規は(例えば甲の位置より乙の位置に)並行に移動し得るより任意の位置に並行線を書き得。又直角定規 9.10 は廻し得るにより傾斜せる直線をも書き得。

118. 直交の並行クランク Parallel Cranks, Cross Compounded.

図. 直交の並行クランク

クランク 12, 34, 36, 15 は相等しく連結棒(カップリング・ロッド)Coupling Rod 24, 56 は両軸距離 13 と相等し。軸 1 のアーム 12, 15 は直交し、又軸 3 のアーム 34, 36 は直交す。軸 1 の回転は 24, 56 によりて並行軸 3 を回転し其の連比は一なり。本機は一側のクランクが回転力を伝うるに不利なる位置にあるとき他側のクランクは有利の位置にあるにより死点なし。機関車の左右の車輪の結合に応用せらる。

119. 三個の並行クランクと連結棒(其一)Three Parallel Cranks and Coupling Rods.

図. 三個の並行クランクと連結棒1

クランク 14, 25, 36 は相等しく連結棒(カップリング・ロッド)45, 56, 64 は相等しく且其の長は二軸受の距離 12, 23, 31 に等し。三軸 1, 2, 3 は並行す。

クランク軸 1 の等速回転はクランク軸 2 及び 3 を死点なく等速に回転せしむ。

120. 同(其二)

図. 三個の並行クランクと連結棒2

軸 1 の回転は並行軸 3 を死点なく回転せしむ。両軸の速比は一なり。二軸が同一直線上にあるかもしくは接近するときは並行リンク軸接となる((645) を見よ)。

121. 不思議のテコ Lever Paradox.

図. 不思議のテコ

リンク 435, 687 は全く相等しく 34=35, リンク 38, 46, 57 は相等しく (115) と同一なり。腕(アーム)1, 2 はそれぞれリンク 46, 57 の中央より直角に出づ。3, 8 両点は支点にして 38 は直立す。左右の相等しきオモリはアームの何れの位置にても平衡す。

122. トランスレーター Translator.

図. トランスレーター

左図において 1243, 3465 は並行クランク。点 5, 6 は同時に相等しき図を書く。右図において各リンクの長は相等し。1579 は並行四辺形の角点を為す。依て 1 点の外に更に 9 点を臨時に固定する時は 5, 7 両点は同時に相等しき図を書く。綱目クランクの名あり。

図. 小形軽便秤

1, 2, 3, 4 は並行リンクを為す。棒 3 は水平台 5 上に直立す。リンク 4 の上部に水平皿 6 あり。扇板 7 とリンク 1 とは同軸に固着す。7 の左端下部には適当量の錘が取付く。台 5 を水平に置きて指針 8 の指す点を 0 と目盛る。皿 6 に分銅を載せその際に針 8 の示す点にその重量に相当する目盛を刻む。斯くして物品を皿 6 に載せて針の指示する目盛によりてその重量を知り得。 皿 6 は常に水平を為しつつ上下動し傾くことなし。

124. 楕円コンパス(エリプソグラフ)Ellipsograph.

図. 楕円コンパス

12=45=a, 23=34=46=62=b.

1, 2, 3 及び 5, 4, 3 はそれぞれ一直線上にあり。1 を静止し 5 を 1 を通過する一直線上に動かさば 6 は長半径 a+b, 短半径 a-b, 中心 1 の楕円を書く。又 4 点も楕円を書く。4 点は直線 35 の延長上にあるも可なり。

125. 死点を除去せるクランク仕掛

図. 死点を除去せるクランク仕掛

12=34=56, 13=24, 35=46, ∠135=∠246。135, 246 はそれぞれ一体を為す。クランク・ピン 3 が死点に達したるときクランク・ピン 5 はクランク 26 を廻す。従て回転に当たり死点なし。(118), (119), (120) と同一作用なり。