CalculiXでは定常状態になる水力学、空気力学ネットワーク計算が可能です。 これは単独の問題としても計算できますし、力学や隣接構造間の熱計算などと併用することも可能です。 ここでは[10]で取り上げられている単独の問題としての水力ネットワークを解析します。 入力デッキ pipe.f はテストパッケージに含まれています。
ネットワークの形状は図25に示すとおりです。これは以下からなる線形ネットワークです:
パイプはマニングの粗度係数 n=0.015 の特性を持つとします。入力デッキは以下のようになります:
** ** 構造:2つのタンクをつなぐパイプ ** テスト対象:水力ネットワーク ** *NODE,NSET=NALL 2,0.,0.,14.5 3,0.,0.,14.5 4,0.,0.,12.325 ... 26,14.9419,0.,6.5 *ELEMENT,TYPE=D,ELSET=EALL 1,0,2,3 2,3,4,5 ... 13,25,26,0 *MATERIAL,NAME=WATER *DENSITY 1000. *FLUID CONSTANTS 4217.,1750.E-6,273. *ELSET,ELSET=E1 2 *ELSET,ELSET=E2 3,5 *ELSET,ELSET=E3 4 *ELSET,ELSET=E4 6 *ELSET,ELSET=E5 7 *ELSET,ELSET=E6 8 *ELSET,ELSET=E7 9,11 *ELSET,ELSET=E8 10 *ELSET,ELSET=E9 12 *ELSET,ELSET=E10 1,13 *FLUID SECTION,ELSET=E1,TYPE=PIPE ENTRANCE,MATERIAL=WATER 0.031416,0.025133 *FLUID SECTION,ELSET=E2,TYPE=PIPE MANNING,MATERIAL=WATER 0.031416,0.05,0.015 *FLUID SECTION,ELSET=E3,TYPE=PIPE BEND,MATERIAL=WATER 0.031416,1.5,45.,0.4 *FLUID SECTION,ELSET=E4,TYPE=PIPE ENLARGEMENT,MATERIAL=WATER 0.031416,0.070686 *FLUID SECTION,ELSET=E5,TYPE=PIPE MANNING,MATERIAL=WATER 0.070686,0.075,0.015 *FLUID SECTION,ELSET=E6,TYPE=PIPE CONTRACTION,MATERIAL=WATER 0.070686,0.017671 *FLUID SECTION,ELSET=E7,TYPE=PIPE MANNING,MATERIAL=WATER 0.017671,0.0375,0.015 *FLUID SECTION,ELSET=E8,TYPE=PIPE GATE VALVE,MATERIAL=WATER 0.017671,0.5 *FLUID SECTION,ELSET=E9,TYPE=PIPE ENLARGEMENT,MATERIAL=WATER 0.017671,1.E6 *FLUID SECTION,ELSET=E10,TYPE=PIPE INOUT,MATERIAL=WATER *BOUNDARY 3,2,2,1.E5 25,2,2,1.E5 *STEP *HEAT TRANSFER,STEADY STATE *DLOAD EALL,GRAV,9.81,0.,0.,-1. *NODE PRINT,NSET=NALL U *END STEP
CalculiXでは線形ネットワークは3節点ネットワーク要素(Dタイプ要素)によってモデル化されます。 曲がり部では要素節点の温度と圧力は未知です。これらには自由度 0 と自由度 2 が、それぞれ割り当てられています。 中間節点では質量流速が未知で、これには自由度 1 が割り当てられています。 ネットワーク要素のプロパティーはキーワード *FLUID SECTION で定義されます。 これらについてはセクション 6.4(気体)、セクション 6.5(液体配管)、セクション 6.6(液体チャネル) で詳しく扱います。取り上げるネットワークでは以下が必要になります:
入力デッキではこれらの要素は全てDタイプ要素として定義されています。 要素の節点の正しい座標にあり、*FLUID SECTION カードによって各要素は 適切に表現されています。 ダミーの入り口・出口ネットワーク要素は *FLUID SECTION カードでタイプ無しにすることで設定されていることに注意してください。
水力ネットワークで必要になる材質プロパティーは密度(*DENSITY カードで定義)、比熱と動粘性係数(両方共*FLUID SECTIONカードで定義)になります。 比熱が必要になるのは熱移動をモデル化する場合だけで、今回は不要です。水の動粘性係数は 1750×10-6 N s/m2です[34]。必要になる境界条件は節点3と節点25に対する大気圧で、この2点は両方ともタンクの水面に位置します。 ネットワーク要素の曲がり部の節点では圧力は自由度2を持つことに注意してください。
ネットワークは*COUPLED TEMPERATURE-DISPLACEMENT プロシージャ、または*HEAT TRANSFER プロシージャでのみアクティブになります。 ここでは構造物は考慮していないので熱解析のみ実行されます。最後に重力荷重を指定する必要があります。これは水力ネットワークでは必要不可欠なものです。 節点出力に関してはNTで自由度0が、Uで自由度1から3までが必要なることに注意してください。 関心があるのは質量流速(中間節点で自由度1)と圧力(曲がり部節点で自由度2)なので、*NODE PRINT 行のすぐ下でUが選択されています。 正式にはUは変位で、こうすることによって.datファイルにラベル付けされます。
.datファイルに出力される結果は以下のようになります:
displacements (vx,vy,vz) for set NALL and time 1. 2 8.9592E+01 0.0000E+00 0.0000E+00 3 0.0000E+00 1.0000E+05 0.0000E+00 4 8.9592E+01 0.0000E+00 0.0000E+00 5 0.0000E+00 1.3386E+05 0.0000E+00 6 8.9592E+01 0.0000E+00 0.0000E+00 7 0.0000E+00 1.2900E+05 0.0000E+00 8 8.9592E+01 0.0000E+00 0.0000E+00 9 0.0000E+00 1.2859E+05 0.0000E+00 10 8.9592E+01 0.0000E+00 0.0000E+00 11 0.0000E+00 1.5841E+05 0.0000E+00 12 8.9592E+01 0.0000E+00 0.0000E+00 13 0.0000E+00 1.6040E+05 0.0000E+00 14 8.9592E+01 0.0000E+00 0.0000E+00 15 0.0000E+00 1.9453E+05 0.0000E+00 16 8.9592E+01 0.0000E+00 0.0000E+00 17 0.0000E+00 1.7755E+05 0.0000E+00 18 8.9592E+01 0.0000E+00 0.0000E+00 19 0.0000E+00 1.8361E+05 0.0000E+00 20 8.9592E+01 0.0000E+00 0.0000E+00 21 0.0000E+00 1.5794E+05 0.0000E+00 22 8.9592E+01 0.0000E+00 0.0000E+00 23 0.0000E+00 1.6172E+05 0.0000E+00 24 8.9592E+01 0.0000E+00 0.0000E+00 25 0.0000E+00 1.0000E+05 0.0000E+00 26 8.9592E+01 0.0000E+00 0.0000E+00
パイプの質量フラックス(中間節点での最初の自由度、1列目)は一定値89.592 kg/sをとります。 この結果は[10]での結果89.4 l/sとよく合っています。 全ての節点、要素の定義がリストアップされているわけではないので、出力を読むのは簡単で、位置Aが節点5、位置Bが節点7-9、位置Cが節点11-13、位置Dが節点15-17、位置Eが節点19-21、位置Fが節点23であることがわかります。 結果ファイルの2列目は圧力です。これを見ると曲がり部、弁部、パイプ径の縮小部で圧力が下がっていることがわかります。一方で、パイプ径の拡大部では圧力が増加しています(流速は下がっています)。
ネットワークの構造的側面(例えばパイプ壁面)もモデル化されている場合には流体の圧力は自動的に構造要素面にマッピングされます。 これは*DLOADカードの PxNP タイプのラベルで設定可能です。