静解析では時間の次元が考慮されません。荷重は準静的なやり方、つまり慣性効果が無視できるほどゆっくりと適用されるとみなされます。静解析は *STATIC キーワードで定義されます。静的ステップは幾何的に線形にも非線形にもできます。どちらの場合でもラグランジュ的視点が使われ、全ての変数は材料座標系で指定されます[20]。従って CalculiX 内部で使用される応力は非変形曲面に働く第2 Piola-Kirchhoff テンソルです。
幾何学的に線形な計算では無限小ひずみが使用され(線形化されたラグランジュひずみテンソル)、荷重は互いに干渉しません。従って2つの異なる荷重による変形はそれぞれの荷重による変形の合計になります。線形計算では Cauchy 応力と Piola-Kirchhoff 応力の違いは無視されます。
幾何学的に非線形な計算では完全形のラグランジュひずみテンソルが使用されます。幾何学的に非線形な計算は *STEP カード上で NLGEOM パラメーターを設定することで有効になります。また非線形材料挙動(例えば*HYPERELASTIC, *PLASTIC..。ただし *USER MATERIAL は除かれます)を使用している場合には(NLGEOM パラメーターが使用されているかどうかによらず)自動的に有効になります。このステップは通常は複数のインクリメントに分割され、ユーザーは *STATIC カードで初期インクリメント長さとステップの全長さを設定しなければなりません。インクリメント長さは固定することもできますし(*STATIC カードの DIRECT パラメーター)、自動で決めることもできます。自動インクリメントの場合は問題の収束特性に従ってインクリメント長さが自動的に調整されます。各インクリメントでは収束に到達するまでプログラムが繰り返し計算を行ないます。収束しない場合にはインクリメントサイズを小さくしながら再度、計算を試みます。各イテレーションでは幾何線形な剛性行列が、最後のイテレーションでの変形による初期変位剛性と最後のイテレーションでの応力による初期応力剛性を使って増大されます[78]。ファイル出力には第2 Piola-Kirchhoff 応力が Cauchy 応力または真応力に変換されて出力されます。実際に構造体に働く応力はそれらであるからです。
周期対称な構造体のためには特別な条件が用意されています。周期対称な構造体は N 個の同一区間で特徴づけられます。図117と次のセクションでの説明を参照してください。周期対称な荷重がかかったこれら構造体の静解析では周期対称な変位が生じます。こういった計算は区間のひとつだけ考えれば済みます。この区間はデータム・セクターと呼ばれ、周期対称な条件下にあります。つまり円筒座標系において(直交座標系ではありません!)区間の右側境界と左側境界での変位が一致するのです。こういった境界条件の問題は *SURFACE、*TIE、*CYCLIC SYMMETRY MODEL といったキーワード・カードを使うことで大幅に簡略化できます。これらのキーワード・カードで左右の境界の節点と区間サイズを定義できるのです。さらに適切な多点拘束も自動的に生成されます。これらは摂動周波数解析の前に行なう静的事前荷重ステップでも使用することができます。