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周波数解析

周波数解析では、構造体の最低固有周波数と固有周波数モードが計算されます。CalculiX では質量行列は集中質量行列ではないので、一般化された固有値問題を解かなければなりません。これについての理論的な話は振動や有限要素についての教科書(例えば[78])であればどんなものにも載っています。現在の実装での重要な点は、一般化された固有値問題の最小固有周波数を探す代わりに、逆問題の最大固有値の決定が行なわれているということです。大規模な問題ではこのようにすることで実行時間を100倍(!)も短くできるのです。逆転は線形方程式ソルバー SPOOLES を呼び出して行なわれます。周波数ステップは *FREQUENCY キーワードによって有効になり、摂動を加えることもそうしないこともできます。

摂動パラメーターが *STEP カードで有効化されていない場合には周波数解析は荷重のかかっておらず、一様なSPC・MPCによって拘束された構造体に対して行なわれます。周波数ステップの以前のステップは結果になんの影響も与えません。

摂動パラメーターが有効な場合、剛性行列は(存在すれば)最後の非摂動・静的ステップの最終状態での変位・応力からの影響を受け、材料パラメーターはそのステップの最終状態での温度に基づいて決定されます。従ってタービン翼の周波数に対する遠心力の効果を解析する場合はまず荷重を考慮した静解析を行ない、その後に続く周波数ステップの *STEP カードで摂動パラメーターを設定します。摂動のあるステップの最後で荷重はゼロにリセットされます。

入力デッキが「problem.inp」というファイルに保存されているとしましょう。「problem」は任意の名前で構いません。この時、固有周波数は「problem.dat」に保存されます。さらに *FREQUENCY カードで STORAGE パラメーターが有効(STORAGE=YES)になっている場合、後で(例えば線形非定常ステップで)使用するために固有周波数、固有モード、質量行列がバイナリ―形式の「problem.eig」というファイルに保存されます。

固有モードの出力は全て質量行列平均で正規化されています。つまり一般化された質量は1です。一般化された固有値問題の固有値は実際のところは固有周波数の平方です。固有値は実数であることが保証されます(剛性行列と質量行列は対称です。唯一の例外は接触摩擦を考慮した場合で、この時には複素固有周波数になります)が、正の値になるのは正定値の剛性行列の場合だけです。事前の荷重によっては剛性行列は必ずしも正定値になりません)。純虚数の固有周波数となることがあり、これは物理的には構造体が折れ曲がることを意味します。

固有周波数とは別に全ての剛体モードに対して総有効質量と総有効モード質量が計算され、.datファイルに保存されます。剛体モードには6つあります。3つは平行移動、3つは回転です。これらを {R} で表すことにしましょう。これは単位剛体モード、たとえばグローバルX方向の単位移動量と対応するベクトルです。関与パラメーター Pi は以下の様に計算されます。

Pi = {Ui}T[M]{R} (192)

これらは選択された剛体運動における各モードの関与の度合いを示しています。モードは質量で正規化されていることを思い出してください。これによってモードの単位は$ 1/\sqrt{\text{mass}}$、剛体運動の単位は長さになります。有効モード質量は$ P_i^2$で定義され、総有効モード質量は

$\displaystyle \sum_i P_i^2$ (193)

で定義されます(単位:質量・長さ2)。総有効質量は剛体運動のサイズ、つまり剛体運動とそれ自体の内積になります。

{R}T[M]{R} (194)

もし無限の数のモードを計算したとすれば、総有効モード質量は総有効質量と一致します。従って有限の数のモードの計算では総有効モード質量はそれよりも少なくなります。総有効モード質量と総有効質量を比較すれば、(少なくとも剛体運動で)精度の良いモード非定常計算を行なうためにどれだけの数のモードを計算すればいいか概観することができます。

周波数計算の特殊な例としては周期対称な計算が挙げられます。こういった計算のためには *SURFACE*TIE*CYCLIC SYMMETRY MODEL*SELECT CYCLIC SYMMETRY MODES といったキーワード・カードが利用可能です。この種の計算は図117に示すような周期的に並べられた同一区間からなる構造体に対して適用できます。

図117: 4つの同一区間からなる周期対称な構造体
\begin{figure}\epsfig{file=Cycsym.eps,width=10cm}\end{figure}

こうした構造体では1つの区間(データム・セクターとも呼ばれます)をモデル化するだけで構造体全体の固有周波数と固有モードを得ることができます。データム・セクターの左右の境界(または表面)の変位値は位相シフトされます。シフトは構造体の円周に沿った波がいくつ探し出されるかによって決まります。図118では円周に沿って2つの完全な波が現れている円盤全体の固有モードの1つが示されています。これは4つのゼロ交差波と節直径2に対応しています。この節直径(周期対称モード数とも呼ばれます)は波数、または構造体で変位がゼロとなる直径数と考えることができます。

図118: 節直径2の円盤全体の固有モード
\begin{figure}\epsfig{file=Noddiam2.ps,width=10cm}\end{figure}

最低節直径はゼロで、これはデータム・セクターの左右境界が一致する解と対応します。N 個の区間からなる構造体では可能な節直径は N が偶数の場合 N/2 、奇数の場合は (N-1)/2 です。節直径は *SELECT CYCLIC SYMMETRY MODES カードで選択されます。*CYCLIC SYMMETRY MODEL カードでは 360° にフィッティングされるベース区間の数が設定されます。また同じカードで.frdファイルに保存される解で使用される区間数を設定します。これによって1つの区間だけで計算した場合でも解を描画する際に構造体全体を描画できます。データム・セクターは依存面(スレーブ)から独立面(マスター)へ向かう向きを回転方向として増加します。

数学的にはデータム・セクターの左右の境界はMPCによって複素係数で結合されます。これによってハミルトニアン剛性行列に対する複素一般化固有値問題となります。これは実数固有値問題へと簡略化することができ、その行列は元の問題の2倍のサイズになります。

データム・セクターの左右の境界の間の位相シフトは 2πN/M によって与えらます。ここで N は節直径、M は360°での ベース区間の数です。N は整数でなければなりませんが、CalculiX では M は実数で構いません。これによってユーザーは M に対して架空の値を入力して(高度な問題のために)データム・セクターの左右の境界の間に任意の位相シフトを与えることができます。

周期対称の軸を含むモード(例えば円盤全体)では、節直径が0、1、1を超えるかどうかによって対称軸上の節点に対して異なる取り扱いが行なわれます。節直径が0の場合、軸上の節点は周期対称軸に垂直な面内に固定されます。節直径が1の場合は周期対称軸に沿って動くことはできず、さらに大きな節直径の場合は全く動くことができなくなります。こうした節直径が0、1の構造体計算ではステップを分けて行なう必要があります。

最後に、軸対称な要素を使った周波数計算での注意があります。現在のところ、計算できるのは節直径0と対応する固有モード、つまり完全軸対称なモードだけです。もし非対称モードを計算したい場合には体積要素で区間をモデル化し、周期対称解析を行なってください。


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guido dhondt 2016-03-08