キーワードのタイプ:ステップ
このプロシージャを使用すると静解析を行なうことができます。荷重は、最後の *STATIC ステップの荷重と現在のステップで指定された再定義によって置換された荷重との合計になります。また、このカードは熱伝達のない非圧縮性流れ計算の定常状態の補正でも使用されます。
オプションパラメーターは SOLVER、DIRECT、EXPLICIT、TIME RESET、TOTAL TIME AT START の5つです。SOLVER は続く方程式系を解くのに使用されるパッケージを決定します。設定できるのは以下のソルバーです。
デフォルトは「SGI、PARDISO、SPOOLES、TAUCS」の中でインストールされていて、リストで最初に来るものです。どれもインストールされていない場合は CalculiX パッケージに同梱されている反復ソルバーがデフォルトになります。
SGI ソルバーは最速ですが、プロプライエタリです。もし SGI 製のハードウェアを所有していれば科学計算パッケージも持っているはずです。このパッケージには SGI 疎系ソルバーが含まれています。SPOOLES も非常に高速ですが複数コアで実行する機能がなく、解ける系のサイズは使用する RAM メモリーのサイズによって制約を受けます。RAM が2GBの場合には250,000までの式が解けます。TAUCS も良いですが、個人的には LLT 分解でしか使用したことがありません。この解法が適用できるのは陽な有限系だけです。このソルバーは複数コアでの実行機能があり LU 分解にも対応していますがあまりうまく実行できたことはありません。次に来るのが反復ソルバーです。SOLVER=ITERATIVE SCALING が選択されている場合には前処理は対角項のスケーリングに制限されます。SOLVER=ITERATIVE CHOLESKY では不完全コレスキー前処理が有効になります。コレスキー前処理によって収束性がよくなり、実行時間が短くなる可能性がありますが、この処理には行列の非ゼロ成分とおおよそ対応する量の追加記憶領域が必要になります。メモリーが足りない場合は対角スケーリングは最後の選択肢にした方がよいでしょう。反復法は完全な3次元構造体に対してはうまく動きます。例えば、半球の計算では ITERATIVE SCALING ソルバー設定の方が約9倍、また ITERATIVE CHOLESKY ソルバー設定の方が約3倍、SPOOLES よりも高速です。平板やシェルなどの2次元構造体では、効率は劇的に低下し、収束させるためにはしばしばコレスキー前処理が必要になります。薄い構造体を多用している場合のほとんどではSPOOLES(やその他の直接解法ソルバー)はうまく動きますが、反復ソルバーよりも多くの記憶領域が必要になります。PARDISO は Intel 製のプロプライエタリなソルバーです。
パラメーター DIRECT 非線形計算でだけ意味を持ち、自動インクリメントが無効化されることを表します。
パラメーター EXPLICIT は流体計算でだけ意味を持ちます。このパラメーターが存在する場合には流体計算は陽的に行なわれ、それ以外の場合は半陰的に行なわれます。静的な構造計算は常に陰的に行なわれます。
パラメーター TIME RESET は現在のステップ終了時の総時間が、前のステップ終了時の総時間と一致するように指定するのに使用します。前のステップがない場合は目標総時間はゼロになります。このパラメーターが指定されていない場合には現在のステップ終了時の総時間は、前のステップ終了時の総時間に現在のステップでの時間間隔を足したものになります(*STATIC キーワードの下の2番目のパラメーター)。つまり前のステップ終了時の時刻が10で、現在の時間間隔が1の場合には現在のステップ終了時の総時間は11になります。TIME RESET パラメーターが使用されている場合には現在のステップ開始時の総時間は9になり、現在のステップ終了時に10になります。 熱機械計算が非定常の熱伝達ステップとそれに続く準静的な静的ステップに分けられている場合(こうすると *COUPLED TEMPERATURE-DISPLACEMENT オプションや *UNCOUPLED TEMPERATURE-DISPLACEMENT オプションを使って熱計算と機械計算で同じだけのイテレーションを繰り返したりするよりも計算を速くすることができます)にはこれが便利な場合があります。CalculiX では静的ステップには有限の時間幅が必要ですが、準静的なステップでは時刻カウントを進めたくないということはよくあります。
パラメーター TOTAL TIME AT START を使うとステップ開始時の総時間に特定の値を設定できます。
静的ステップではデフォルトでは荷重は線形に適用されます。*AMPLITUDE カードを使用すると他の荷重パターンを定義することができます。
モデルに非線形性(形状・材料の非線形性)がある場合には、反復によって解にそれが現れます。この場合、収束させるようとするとそのステップが非常に大きなものになるので、インクリメントによるステップの分割が通常は必要になります。ユーザーは初期インクリメントの長さを定義することができます。このサイズは、パラメーター DIRECT が選択されている場合は一定に、それ以外の場合は解の収束性に従って CalculiX によって調整されます。完全に線形な計算ではステップのサイズは常に1.0で、反復計算は行なわれないので *STATIC に続く2行目は必要ありません。
(例えばキーワード *CREEP を使用して設定した)クリープ挙動は *STATIC ステップでは無効化されることに注意してください。クリープを考慮したい場合は *VISCO キーワードを使用してください。2つのキーワードの書式は同じです。
1行目:
例: *STATIC,DIRECT .1,1.
上記では静的ステップを定義し、そのステップの線形方程式ソルバーとしてSPOOLES(デフォルト)を選択しています。また2行目は初期時間インクリメントが0.1、総ステップ時間が1であることを表しています。さらにパラメーター DIRECT で時間インクリメントを固定しています。これによって正常に計算が進む場合には、計算は長さ0.1のインクリメント10個で構成されます。
サンプルファイル: beampic、beampis