超弾性材料とはポテンシャルをラグランジュひずみテンソルで微分するとそれが第2 Piola-Kirchhoff 応力テンソルがとなるようなポテンシャル関数を持つ材料のことです。この定義には線形弾性材料も含まれますが、普通、超弾性材料という言葉は非線形弾性材料に対してのみ使用されます。等方性の超弾性素材の重要な一群のひとつはポテンシャル関数がひずみ不変量だけの関数であるようなものです。現在、CalculiXに含まれるゴム材料モデルはこのタイプです(Arruda-Boyce、Mooney-Rivlin、Neo Hooke、Ogden、Polynomial、Reduced Polynomial、Yeoh)。これらは *HYPERELASTIC キーワードで選択することができます。ゴム材料は実際上は非圧縮性を持ちます(実際上、1に近い値をとる第3ラグランジュひずみ不変量には依存しません)。第3不変量(圧縮性)への依存性は初めの2つの不変量への依存性とは分けられ、いわゆる圧縮性係数と呼ばれるものに支配されます。これが値 0 をとると完全な非圧縮性材料になります。完全な非圧縮性材料ではハイブリッド有限要素を使用する必要があり、この要素では(変位に加えて)圧力は追加の独立変数として扱われます。CalculiXではこのような要素は用意されていません。従ってCalculiXを動作させるためにはわずかな圧縮性が必要になります。ユーザーが圧縮性係数にゼロを設定すると、CalculiXはポアソン係数初期値 0.475 に相当するデフォルト値を使用します。
等方性の超弾性材料のもうひとつの例は hyperfoam 材料で、これもCalculiXには実装されています(*HYPERFOAM キーワードで有効化されます)。Hyperfoam 材料は非常に大きな圧縮性を持ちます。
この他に超弾性モデルを使ってよく計算されるのは人体組織(肺組織、心臓組織……)です。こういった材料を計算するためには異方性のモデルが使用され、そのポテンシャル関数はラグランジュひずみテンソル成分に依存します。こういったモデルはCalculiXには実装されていませんが、それを追加することはそう難しいことではありません。詳細については[8]を参照してください。また超弾性材料の代変形理論の非常に素晴らしい説明が[67]にあります。