*MODAL DYNAMIC キーワードによって有効化されるモード動解析では、動荷重に対する構造体の応答は最低固有モードの線形結合として仮定されます。固有モードは「problem.eig」(「problem」部分は構造体の名前)というファイルから取得できます。これらの固有モードは同じ入力デッキ、または先に実行された入力デッキの中にある先行するステップ(*FREQUENCY カード、または*HEAT TRANSFER,FREQUENCYカードでSTORAGE=YES)から決定されます。後者の場合、周期対称性のある(つまり *SELECT CYCLIC SYMMETRY MODES が使用されている)固有モード解析では *MODAL DYNAMIC カードで CYCLIC SYMMETRY パラメーターが使用されていることを確認してください。動荷重は *AMPLITUDE キーワードを使って区分線形関数関数として定義できます。
モード動解析での変位境界条件は固有モードの決定で使用されるステップでの同一節点、同一方向のゼロ境界条件と一致しなければなりません。これは ABAQUS で基本運動と呼ばれるものに対応します。非ゼロ境界条件の典型的な問題は地震による建物の基本運動です。基本運動を使用したモード動解析では非同次な多点拘束は使用できないことに注意してください。(*TRANSFORM カードで定義される)円筒座標系のような非グローバル座標系では、これは単点拘束に対しても当てはまります。実際のところ、ローカル座標系における境界条件は内部的には非同次な多点拘束に変換されるます。従ってモード動解析では境界条件は必ずグローバル直交座標系で定義しなければなりません。
温度荷重、残留応力は使用できません。こうした荷重が現れる場合は直接積分動プロシージャを使う必要があります。
モード動解析の非ゼロの変位境界条件では、それらによって求められた仮の静的な解の1次、2次の時間微分(速度と加速度)を計算する必要があります。また(他の荷重が無い状態での)時刻 t での非ゼロの変位境界条件に基づいて、その時刻での静的な解が決定されます(剛性行列が.eigファイルに含まれるのはこのためです)。非ゼロの変位境界条件が時間変化する場合には、求められた静的な買いも同じように変化します。さて動的問題の解は仮の静的な解と、最も低い固有モードの線形結合の和と考えられます。求められた静的な解の1次、2次の時間微分を決定するためには時刻 t-Δt、t 、t+Δt での解に基づいて、2次精度の有限差分スキームが使用されます。ここで Δt はモード動的ステップでの時間刻みです。モード動解析の開始時には、前ステップの終了時の非ゼロ境界条件は定常状態(速度と加速度がゼロ)に到達しているとみなされます。
*MODAL DAMPING キーワード・カードを使用することで減衰を考慮することができます。CalculiX での減衰モデルは直接減衰とレイリー減衰です。直接減衰が設定されている場合は粘性減衰係数 ζ が各モードに対して個別に定義できます。レイリー減衰では減衰行列は問題の剛性行列と質量行列の線形結合と見なされます。どちらの場合も問題はその固有モードに従って分割され、常微分方程式になります。結果は、固有モードが有限であることによる誤差を除けば区分線形荷重と同程度に正確になります。
モード動解析は周期対称な構造体でも行なうことが可能です。この場合には固有モードは関連する全てのモード直径で決定される必要があります。周期的なモード動解析には2つの制限があります。
1D要素、2D要素を使用しているときには特別な注意が必要になります。これらの要素は内部的には3D要素に拡張されるため、境界条件と節点への点荷重の使用時には元の節点と拡張後の対応節点を結ぶ多点拘束が作成されます。これらのMPCは剛性行列と質量行列の構造を変化させます。しかし剛性行列と質量行列は *MODAL DYNAMIC ステップの前の *FREQUENCY ステップで.eigファイルに保存されます。これは初期条件処理時に質量行列が([18])、非ゼロ境界条件を考慮時に剛性行列が必要となるためです。簡単に言えば *MODAL DYNAMIC ステップでは *FREQUENCY ステップで点荷重や境界条件が設定されていない節点に対して、点荷重や節点に対する非ゼロ境界条件を設定してはいけないのです。*FREQUENCY ステップでは点荷重の値や境界条件としてゼロを設定することができます。シェルへ点荷重を使用している例としてはテストパッケージのshellf.inpが挙げられます。
モード動計算の拘束化には特に大きな労力が割かれています。接触を考慮している場合にはこれは特に重要です。接触を収束させるには非常に小さな時間刻みが必要とされるからです。もし計算時間が気になる場合が以下の法則を参考にしてください。
以上をまとめると、一定の点荷重を1節点に与え(ヘヴィサイドの階段関数)、その節点の変位だけを出力する場合に最大速度を得られるということになります。