セクション6.9.16、セクション6.9.17では空力学ネットワーク、水力学ネットワークの支配方程式を導出しました。空力学ネットワークの基本変数は全温度、全圧、質量流量であることが示されています。さらに要素ごとに幾何的パラメーターが1つ、追加未知量として定義される場合があります。有効化を行なうためにこのオプションはプログラム内でコピーされなければなりません。現在のところ、このオプションはゲート値のためにだけ存在しています。他の変数は全てこれら3つの量を元に計算することが可能です。実際のところ、これは唯一の選択肢であるというだけでなく渡したとの目的に最適であるように思います。水力学ネットワークではこれら変数は圧力、温度、質量流量へと変わります。これは温度、変位といった構造系の未知量とは全く異なります。このため構造系計算で使用される自由度0から3は表(21)の様にネットワーク様に再定義されます。
流体要素の端節点と中間節点ははっきりと区別されます。ネットワーク要素は2つの端節点と1つの中間節点で構成されることを思い出してください(セクション6.2.34)。2つ以上の支流が合流することもあり得るので、質量流量は端節点では必ずしも一意に決まりません。従って質量流量をネットワーク要素の中間節点での未知量として定義するのは理にかなっています。幾何パラメーターが存在する場合には、同じことが幾何パラメーターについても言えます。同様に全温度、全圧も要素内で未知量になり得ます。不連続点(拡大流路やオリフィス)の正確な位置は必ずしも既知だとは限らないからです。従って全温度と全圧を端節点での未知量として定義するのはもっともなことです。静温度は基本変数ではありません。全温度、質量流量、全圧がわかると、静温度は計算することが可能です。静温度は導出量なのです。
構造問題でのフィールド nactdof と同様に、ネットワーク問題ではフィールド nactdog が用意されています。このフィールドは4つの行とモデル(構造節点を含みます。これはローカルな気体節点数とグローバルな節点数の間での余計なポインター作業を回避するためです。)内の節点と同じ数の列を持つ行列と見ることができ、気体節点の特定自由度が有効かどうかを表します。エントリーが非ゼロ(実際には正の値。nactdof とは異なり nactdog が負の値を取りません)の場合には有効、それ以外の場合は無効(これは値が既知、または節点が構造節点であるために適用不能であることを意味します)です。自由度は表21の始めの3行と対応していますが、さらに明確になるよう表22に再度あげてあります。ここでも関連するのは始めの3行だけです。
nactdog(2,328) が非ゼロの場合、それは節点328の全圧が系の未知量であることを意味します。この非ゼロ値は実際には節点328での全圧に付随する自由度の番号を表しています。自由度の番号は方程式の一連の結果での列番号と対応しています。自由度での nactdog に対応するのが方程式での nacteq です。このフィールドは nactdog と同じサイズを持ちますが、非ゼロのエントリーは表23に示す様に特定の保存方程式を意味します。
nacteq(1,8002) が非ゼロの場合、それは節点8002で質量保存方程式が定式化されていなければならないことを意味します。この非ゼロ値は実際には一連の方程式内でのこの式の行番号となります。値がゼロの場合はその方程式は適用されません。例えば隣接する全ての要素の質量流量が既知である場合などがこれに当たります。フィールド nacteq の最後の行は(少なくとも端節点では)等温条件のために使用されます。これはタイプ GAS PIPE ISOTHERMAL の気体パイプと等温気体パイプ要素の後に続く終端リストリクターにのみ適用されます。等温要素ではパイプの2つの端節点での静温度が等しくなる様に指定する追加方程式が導入されます。この方程式は他節点・他変数(節点での全圧、質量流量)での全温度の関数として1節点(従属節点)での全温度を書き下す非線形方程式へ変形されます。この追加方程式を考慮するため、エネルギー保存は従属節点では表現されません(静温度を等しくするために熱の未知量を従属節点に導入すべきという主張も可能なことは認めます)。以上から nacteq(3,8002)=n が非ゼロの場合、それは節点8002 が節点 n の1つと静的節点温度による等温関係を持つ従属節点ことを意味します。
フィールド ineighe(i), i=1, ..., ntg は終端節点での静温度を決定するために使用されます。ゼロの場合、節点 i は中間節点です。また -1 の場合、節点はチャンバーで、静温度は全温度と一致します。正の値の場合にはその値は気体パイプ要素またはリストリクター壁オリフィスを除くリストリクター要素の要素番号で、静温度は全温度とは一致しません。全温度から静温度を計算する際には参照要素の質量流量が使用されます。