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8節点シェル要素(S8とS8R)

汎用の4辺シェル要素です。節点番号と面の法線方向は図58に示す通りです。

図58: 8節点2次要素
\begin{figure}\epsfig{file=C2D8.eps,width=10cm}\end{figure}

CalculiXでは2次シェル要素は自動的に20節点ブリック要素に拡張されます。 拡張のやり方は図59で説明されている通りです。 図59の右で示されるやり方で各シェル節点に対して3つの新しい節点が生成されます。 この節点を使用して新しい20節点ブリック要素が生成されるのです。 S8要素に対してはC3D20要素が、S8R要素に対してはC3D20R要素が生成されます。

図59: 2Dの8節点要素から3Dのブリック要素への拡張
\begin{figure}\epsfig{file=C2D.eps,width=12cm}\end{figure}

シェル要素は湾曲することが可能なため、シェル面の法線は各節点に対して個別に定義されます。 この目的にために*NORMALカードを使用できます。 法線がユーザーによって定義されていない場合、法線はCalculiXによってローカルな形状に従って自動的に計算されます。

節点が複数のシェル要素に所属している場合、それらの要素の節点における法線の一部、または全てが問題になりえます。ユーザーは(*NORMALを使用して)それらを設定しなければならないでしょう。 法線設定がない場合、ローカルな形状に基いて法線が決定されます(ただし法線を決定できない可能性があるのでその場合には要素はひどく歪みます。特に中間節点が中間座標から大きく外れている要素の場合にはこれが顕著です)。 続く処理で、法線の数は次に説明する手続きに従って減らされます。 まずセット内で明示的に法線が定義されている最小要素番号の要素が(存在する場合には)参照用に選択されます。 その法線が参照用法線として定義され、その要素は新しいサブセットに保存されます。 セット内の同タイプの他要素全てのうち、法線と参照用法線のなす角が0.5°より小さく、同じローカル厚みとオフセットを持つものもこのサブセットに保存されます。 サブセット内の要素は同じ法線を持つとされ、その法線はサブセット内の全ての法線のノルム平均で定義されます。 この処理はサブセット内の要素を除いたセット内の要素に対して繰り返され、明示的に定義された法線を持つ要素がなくなるまで続けられます。 次に、セット内に残った全ての要素の中で最小要素番号のものが参照用に使用されます。 その法線が参照用法線として定義され、その要素は新しいサブセットに保存されます。 セット内に残った他要素全てのうち、法線と参照用法線のなす角が20°より小さく、同じローカル厚みとオフセットを持つものもこのサブセットに保存されます。 サブセット内の全法線のノルム平均がサブセット内の全要素の新しい法線として設定されます。 この処理は残された要素に対して繰り返され、各要素の法線が定義されるまで続けられます。

この処理によって複数の法線がひとつにまとめられ、同じ節点に設定されます。 ひとつだけ法線が定義された場合には、その節点はまず3つの新しい節点セットに拡張され、それぞれが3次元拡張されます。 複数の法線が定義された場合には、その節点は節点に存在する法線の数と同じだけ拡張されます。 結果の3D要素が接続されていることを保証するために新しく生成された節点はノット(節)として扱われます。 ノットとは一様に拡張可能な剛体です。つまりノットには平行移動自由度に3つ、回転自由度に3つ、一様な拡大という7自由度を持ちます。 図示するとシェル要素は部分的に重なり合います(図60

図60: ノットで重なり合うシェル要素
\begin{figure}\epsfig{file=shell.eps,width=10cm}\end{figure}

節点がノットになるのは以下の場合です:

バージョン2.7以前のCalculiXではユーザーが回転やモーメントを節点に設定すると同時にノットが設定されました。 バージョン2.8からは静解析ではこの種の負荷は平均回転MPC(セクション8.7.1を参照)を使って制御されるようになりました。 平均回転MPCは自動的に生成されるのでユーザーは気にかける必要はありません。 これによって一般にノットを使用する時には結果がわずかに改善されます。しかし平均回転MPCはドリル・モーメント、つまりシェル表面垂直方向を周りのモーメントを扱う問題では使用できません。 またドリル・モーメントを規定しておかなければならないのと同じように、節点での全ての回転自由度をゼロに設定して置かなければなりません。 シェル表面がグローバル座標系の軸に沿っていない場合にはドリル方向に垂直な軸の周りの回転やモーメントの設定でローカル座標系を定義する必要があります。 また平均回転MPCでの回転ではMPCが90度を超えないように注意してください。

節点を共有している場合、ビーム要素とシェル要素は常に完全に接続されます。 ただしこれは平面応力要素、平面ひずみ要素、軸対称要素には当てはまりません。 1D要素と2D要素の混合では必ずノットが生成されますが、ノットはそれを含む平面応力要素、平面ひずみ要素、軸対称要素に対してはヒンジ(蝶番)としてモデル化されます。 コレラ要素の特殊な性質を考慮するにはそうする必要があるのです(対称な平面の法線と半径方向の面の法線の変位は面要素と軸対称要素に対してそれぞれゼロになります)。

ノットの平行移動節点(*RIGID BODY キーワード・カードの REF NODE を参照)は節点を生成し、回転移動節点が余分に生成されます。

シェル要素の厚みは *SHELL SECTION キーワード・カードで定義できます。定義は要素全体に適用されます。 各節点ごとに節点の厚みを設定する場合は *NODAL THICKNESS を使用します。 これを使うと厚みが変化するシェルをモデル化できます。*NODAL THICKNESS カードで定義された厚みは *SHELL SECTION カード出てぎされた厚みよりも優先されます。 厚みは常に法線方向に適用されます。 *SHELL SECTION カードを使ってシェル要素に物性を設定することができますが、その場合は先の設定は必須になります。

シェル要素のオフセットは*SHELL SECTIONカードで設定できます。 オフセットの単位はローカルなシェル厚みです。例えばオフセット0.5とするとユーザー定義のシェル参照面が拡張された要素の上面にくるようになります。 オフセットには任意の実数を設定できます。これを使って複合材物性を定義することもできます。同一の節点を使って3つの異なるシェル要素を定義し、それぞれのオフセットに-1、0、1を設定すれば(厚みは同じとします)3層の複合材になります。

ただしこのような複合材の節点全てにノットを導入すると、普通、変形が過剰に小さくなります。 これを解決するために複合材を扱うための異なる手法が用意されています。 今のところ、この手法を使用できるのは低減積分に対応した8節点のシェル(S8R)だけです。 できるだけ多くのシェルを定義する代わりに1つだけシェル要素を定義し、COMPOSITE オプションを*SHELL SECTION カードで使用します。 後者のカードの次の下で必要なだけの数の層数を定義できます。 内部的に見るとシェル要素が拡張されるのは3Dブリック要素ひとつだけですが、厚み方向の積分点の数が層数の2倍になります。 計算の間、この積分点にはそれが所属する層の適切な物性プロパティーが設定されます。 .datファイルを見ると(*NODE PRINT カードと *EL PRINT カードを使ってそれぞれの出力を設定した)グローバル3D要素の変位と全ての積分点での応力を確認することができます。 ただし.frdファイルでは(パラメーターOUTPUT=3Dが使用されているかどうかに依らず)各層はそれぞれ拡張され、変位と応力は状況に応じて内挿・外挿されます。 この種の複合材要素に対する制限は次のとおりです:

シェル要素での境界条件の扱いはシンプルです。 任意の平行移動自由度(DOF1からDOF3)、回転自由度(DOF4からDOF6)に対してそれぞれ拘束をかけることができます。 ここでDOF4はグローバル座標系またはローカル座標系なX軸周り、DOF5はY軸周り、DOF6はZ軸の周りの回転です。 変換(*TRANSFORM)が定義されている場合にはローカル座標系が、それ以外の場合はグローバル座標系が使用されます。 平行移動自由度をだけを拘束するとヒンジ(蝶番)を定義可能です。節点の全ての軸に対する回転をゼロに設定している場合を除いてはシェルのドリル軸周りの回転を制限することはできないということに注意してください。

1D要素や2D要素の間の内部ヒンジでは節点は二重に存在しMPCで接続されている必要があります。 3D要素とそれ以外の全ての要素(1Dや2D)の間の接続は常にヒンジです。

ノットが生成されている場合、シェル節点に定義された点への力は修正されません(剛体の参照節点がシェル節点です)。 ノットが生成されていない場合、点負荷は拡張された節点に対して分配され、シェルの中間節点には1/2-1/2の割合で、シェルの端点節点には1/6-2/3-1/6の割合で配分されます。 集中した曲げモーメントやトルクは点負荷として定義され(*CLOAD)、節点の自由度4から自由度6に対して働きます。 これらを使用すると節点に対してノットが生成されます。

負荷分布は *DLOAD カードのラベルPで定義できます。 正の値が法線方向への圧負荷に対応してます。

シェルの参照面への温度追加では *TEMPERATURE カードで法線方向への温度勾配を指定することができます。 デフォルト値はゼロです。

出力では、*NODE PRINT キーワードで指定された節点量がシェル節点に保持されます。 これらは拡張された要素の節点値を平均して得られます。例えばローカルシェル節点1の値は拡張された節点1と5の節点値を平均して得られます。 他の節点に対しても同様のことが言えます。6節点シェルでは次のようになります:

8節点シェルでは次のようになります:

*EL PRINTで指定された要素量は拡張された要素の積分点に保持されます。

*NODE FILE*EL FILE で指定された量のデフォルトの保持先は拡張された節点です。 これには真の3次元の結果を拡張された構造上で見ることができるという利点がありますが、節点番号がシェル節点と違うものになってしまいます。 OUTPUT=2Dを選択すると結果は元のシェル節点に保持されます。この場合には *NODE PRINT コマンドと同じ平均化処理が適用されます。

薄い構造体では注意点が2つあります: ひとつ目は低減積分についてです。梁のアスペクト比が非常に大き場合(細い梁でアスペクト比が40以上)、低減積分は低減積分を使うことで完全積分よりもずっと良い結果が得られます。 ただし薄いせいでアワーグラスモードが簡単に起きてしまいます。とりわけ点負荷をかけた場合は起きやすいでしょう。 この結果、変位が大幅にずれますが応力と断面力は正しい結果になります。 通常は横断面の方向の平均変位も正しい結果が得られます。そうでない場合はより細かい要素で完全積分を行う必要があるでしょう。 2つ目は薄い構造体は簡単に大きなひずみや回転を起こすということです。従ってほとんどの計算では *STEP で NLGEOM パラメーターを使う必要があります。


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guido dhondt 2016-03-08