CalculiXでは汎用のビーム要素です。節点番号は図63に示す通りです。
各節点でローカルデカルト座標系 t-n1-n2 が定義されます。 tは規格化されたローカル接線ベクトル、 n1はローカル第1方向を指す規格化されたベクトル、 n2はローカル第2方向を指す規格化されたベクトルでいわゆる法線です。 ローカル第1方向、ローカル第2方向はビーム要素を図64に従ってC3D20要素やC3D20R要素に拡張する際に使用されます。
ビーム要素の各節点ごとに、図64右のやり方に従って8つの新しい節点が生成されます。 これらの新しい節点はブリック要素の定義に使用され、その位置はローカル方向とその方向の厚み、オフセットによって定義されます。
接線方向はビーム要素の形によって決まります。法線方向(第2方向)の定義方法には以下の2つがあります:
後者の場合にはn1は次のいずれかの方法で定義されます。
節点が複数のビーム要素に所属している場合、まずその節点が所属しているすべての要素について接線と法線が計算されます。 次に *NORMAL カードを使って明示的に法線が定義されている要素セット内で最小の要素番号を持つ要素が参照要素として選択されます。 この要素の法線と接線が参照法線と参照接線として定義され、要素は新しいサブセットに入れられます。 セット内にある同じタイプの他の要素のうち、その法線・接線と参照要素の法線・接線となす角が0.5°より小さく、同じローカル厚み、オフセット、断面を持つもの全てもこのサブセットに入れられます。 サブセット内の要素は全て同じ法線と接線を持つと見なされ、その法線はサブセット内の法線全てのノルム平均で定義されます。接線も同様です。 最後にその法線が接線と垂直となるよう接線と法線の張る平面内でわずかに修正されます。この処理は法線が明示的に定義された要素がなくなるまで繰り返されます。 それが済むとセット内に残った要素のうち、最小の要素番号を持つ要素が参照要素として選択されます。 この要素の法線と接線が参照法線と参照接線として定義され、要素は新しいサブセットに入れられます。 セット内にある同じタイプの他の要素のうち、その法線・接線と参照要素の法線・接線となす角が20°より小さく、同じローカル厚み、オフセット、断面を持つもの全てもこのサブセットに入れられます。 サブセット内の要素は全て同じ法線と接線を持つと見なされ、その法線はサブセット内の法線全てのノルム平均で定義されます。接線も同様です。 最後にその法線が接線と垂直となるよう接線と法線の張る平面内でわずかに修正されます。この処理は各要素に法線と接線が定義されるまで繰り返されます。 それが終わると n1=n2×t に従って第1方向が定義されます。
つまり節点からノットが生成されるのは以下の場合です。
シェルと同様に静的計算で適用される回転やモーメント(曲げモーメント、トルク)に対しては平均回転MPCの自動生成が行なわれます。
ビーム要素・シェル要素では、節点を共有する場合には常に剛性接続が行なわれます。ただしこれは平面応力要素、平面ひずみ要素、軸対称要素に対しては適用されません。1D要素と2D要素が混在している場合にはノットが生成されますが、平面応力要素、平面ひずみ要素、軸対称要素がノットに含まれる場合にはヒンジとしてモデル化されます。これはこれら要素の特殊な性質(対称面に対する変位法線、円周面の法線がそれぞれ平面要素、軸対称要素に対してゼロになる)を考慮するために必要な措置です
ビームの断面は必ず *BEAM SECTION キーワード・カードで指定する必要があります。断面としては長方形(SECTION=RECT)または楕円形(SECTION=CIRC)を指定できます。円形断面は楕円形断面の一種として定義されます。ローカル座標軸は、長方形断面では必ず断面の辺に平行に、楕円形断面では必ず長辺・短辺に平行に定義する必要があります。断面の厚みは自由表面間の距離、つまり円形断面ではその直径になります。
ビーム要素の(第1方向と第2方向の)厚みは *BEAM SECTION キーワード・カードで定義でき、厚みは要素全体に適用されます。一方で節点厚みは *NODAL THICKNESS を使用して各節点に個別に定義可能です。これを使用すると厚みが変化するビーム要素をモデル化することができます。*BEAM SECTION カードで定義された厚みより *NODAL THICKNESS カードで定義された厚みの方が優先されます。
ビーム要素の(第1方向と第2方向の)オフセットは *BEAM SECTION カードで設定でき、デフォルト値はゼロです。オフセットの単位はそれぞれの方向のビームの厚みです。例えばオフセット値が0.5の場合、ユーザー定義のビーム参照ラインは実際には拡張したビームの正の方向の面(つまりローカル座標軸の方向の外部法線を持つ面)の上に乗ります。オフセットには任意の実数値を設定可能です。これを使うとビームによって補強された板などの複合構造や、長方形断面からなる I 断面などを定義することが可能です。
ビーム要素の強化条件の取り扱いは単純です。ユーザーは、個別に任意の平行移動自由度(DOF1から3まで)と回転自由度(DOF4から6まで)を固定できます。ここでDOF4はX軸周りの回転、DOF5はY軸周りの回転、DOF6はZ軸周りの回転を意味します。回転自由度を拘束された節点ではローカル座標系は定義されません。ヒンジは平行移動自由度のみを拘束することで定義されます。
1D要素や2D要素の間の内部ヒンジでは、節点は2重に定義されMPCで結びつけられていなくてはなりません。3D要素と他の種類の要素(1Dまたは2D)の間の接続は常にヒンジになります。
ビーム節点に定義されている点荷重はノットが生成された場合には変更されません(参照節点はビーム節点)。ノットが生成されない場合には点荷重は拡張後の節点に分配され、その割合はビーム中間節点では1/4-1/4-1/4-1/4、ビーム端節点では(-1/12)-(1/3)-(-1/12)-(1/3)-(-1/12)-(1/3)-(-1/12)-(1/3)になります。集中曲げモーメントやトルクは点荷重として(*CLOAD で)定義され、節点の自由度4から自由度6までに働きます。これらを使用した場合には節点にのっとが生成されます。
分布荷重は *DLOAD カードのラベル P1 とラベル P2 によって定義されます。正の値はそれぞれ第1方向、第2方向の圧力荷重に対応します。
ビームの参照面の温度にに加えて、第1方向、第2方向の温度勾配を *TEMPERATURE で指定できます。デフォルトはゼロです。
出力に関しては *NODE PRINT キーワードで指定された節点量がビーム節点に保存されます。保存される値は拡張した要素の節点値を平均したものです。例えば、ローカルなビーム節点1の値は拡張後の節点1、4、5、8の節点値を平均したものです。他の節点に関しても同様のことが言えます。
*EL PRINT で指定された要素量は拡張後の要素の積分点に保存されます。
*NODE FILE と *EL FILE で指定された量はデフォルトでは拡張後の節点に保存されます。これには拡張後の構造体で3次元の結果を見ることができるという利点がありますが、節点番号はビーム節点のそれとは異なるものになります。最初のステップで OUTPUT=2D パラメーターを使用することで元のビーム節点に保存場所を変えることができます。この場合には *NODE PRINT と同様の平均化方法が使用されます。断面力は SECTION FORCES パラメーターによって有効化することができます。これが選択された場合にはビーム節点での応力が断面力で置き換えられます。この値は第1方向n1、第2方向n2と第3方向または接線方向からなるローカル座標系で計算されます(図64)。応力成分は以下の様な意味になります。
断面力は断面にわたって応力を数値積分して計算されます。このため断面の積分点には応力テンソルが必要になります。これは断面に所属する節点での応力テンソルから形状関数を使用して決定されます。従って断面力がおかしく見える場合には(SECTION FORCES パラメーターと OUTPUT=2D パラメーターを取り除いて)拡張後のビームの応力を見てみてください。SECTION FORCES パラメーターは応力を除くすべての結果に対して自動で OUTPUT=2D パラメーターを有効にします。
ビーム要素を除く他の要素では SECTION FORCES パラメーターは何の設定も行ないません。
薄い構造体では2つのことに注意する必要があります。1つ目は低減積分についてです。シェルのアスペクト比が非常に大きい場合(細長いシェル)では低減積分を行なうことで完全積分よりもずっと良い結果を得られることがあります。アワーグラス効果を避けるために、長方形断面を持つB32R要素では2x5x5のガウス‐クロンロッド求積法が使用されます。このスキームには低減積分を使った古典的なガウス求積法がその一部として含まれています。積分点番号は図66に示す通りです。円形断面では通女王のガウス求積法が使用されます。また相対的に小さな要素に対して完全積分を行なおうとするとまれにアワーグラス効果が起きる場合があります。2つ目は薄い構造体では簡単に大きなひずみや回転が起きるということです。従ってほとんどの計算では *STEP カードで NLGEOM パラメーターを使用する必要があります。