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増分(粘)塑性

CalculiXでの増分塑性の実装は[68]、[69]で示されているアルゴリズムに従っていて、中間無応力構造の概念に基づいています。変形は、結晶格子の弾性伸縮・回転に従って起きる転位運動による塑性流動と見なされます。これは変形勾配 F = FeFp のローカルな乗法分解の合成物です。ここで FkK = xk,K は直交座標系を意味します。

現在の実装では弾性応答は等方的で、蓄積エネルギー関数から推定されます(超弾性応答)。また塑性流動も等方的で(体積が保存され)、古典的な von Mises-Huber 降伏条件が適用されます。この条件は主偏差応力空間上の球として可視化することができます。

硬化は、降伏曲面の膨張・縮小の結果起きる等方硬化、降伏曲面の移動によって起きる移動硬化、またはその組み合わせとして表現できます。硬化曲線はミーゼス真応力と相当塑性対数ひずみの関係として定義されなければなりません(参照.変形に対する変形塑性)。

増分塑性は *PLASTIC カードで定義され、等方硬化のための等方硬化曲線、または移動硬化・複合硬化のための移動硬化曲線がその後ろに続きます。複合硬化では等方硬化曲線は *CYCLIC HARDENING で定義されます。*PLASTIC カードの前には *ELASTIC カードによる材料定義が必要で、ここで材料の等方弾性プロパティーを定義します。

時間経過とともに復帰するよう応力が一時的に降伏曲面に残ることができるようにすると、クリープ効果をモデル化することができます[66]。粘塑性則の粘性部は *CREEP で定義されます。デフォルトは Norton 則です。ただしユーザーはユーザーサブルーチン creep.f で独自の法則を定義することもできます。*CREEP の前に *PLASTIC カードが存在しない場合、硬化効果が全くないゼロ降伏局面が仮定されます。*CREEP カードの前には材料の等方弾性プロパティーを定義する *ELASTIC カードが必要です。クリープ挙動は *STATIC ステップ内では無効になることに注意してください。

このモデルでは13の内部状態変数が存在します。

これらの変数は *EL PRINT キーワード(.datファイル)と *EL FILE キーワード(.frdファイル)で順番に従ってアクセスすることができます(SDVラベル)。

*CHANGE MATERIAL カード、*CHANGE PLASTIC カード、*STATIC カード、*VISCO カードを使用するとユーザーは純粋な塑性とクリープ挙動を切り替えることができます。CalculiXで実装されている粘塑性モデルは過大応力モデルです。つまり降伏応力を超えた時にだけクリープが起きます。多くの材料ではこれは現実的ではありません。高温下ではクリープは降伏応力よりもずっと下で観察されることがよくあります。この挙動をシミュレートするために、降伏応力をゼロに設定できるようになっています。高温下の操作条件でクリープの前に起きる(例えば鍛造やその他の加工操作による)初期の大きな塑性変形をシミュレートするためには以下の手順を踏みます。まず *PLASTIC カードと *CREEP カードを使って粘塑性材料として定義します。加工操作ステップでクリープ挙動を無効にするために *STATIC プロシージャを使用します。操作条件下の以降のステップでは *VISCO プロシージャを使用して粘性挙動を有効化します。ただしこの時、*CHANGE MATERIAL カードと *CHANGE PLASTIC カードを使って降伏応力をゼロに設定しておきます。


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guido dhondt 2016-03-08